章用 その他

□そんなふたりの延長線に
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どうしよう。
このシチュエーション、そこに寝てるのがただの女の子なら俺だってほっぺにキスぐらいできるのだ。校内きってのフェミニストと呼ばれるにはそれくらいできて当然。
でも指一本さえ伸ばせないのは、心なしか頬も熱いのも、そこにいるのが件の人間だからで。
呑気に寝息を立てているのは安形惣司郎。
想い人しかし、同性である級友だった。
起きないかなあ。
突っ立っていても仕方ないので生徒会庶務の定位置に座り込む。
ぼーっと頬杖をついて安形の横顔を眺めた。
ニキビもない頬に届かない自分の指。華奢でも女顔でもない男に何故惚れてしまったのかはわからない。
恋に落ちるきっかけは彼と過ごしてきた何年かの間にいくつかあったかもしれないけど、それはあくまで自分が女の子だった場合だ。自分にホモの気があったとはまだ認め難くて安形に欲情する理由を探す。
そう、自分が安形を好きだと気付いたのは彼に「欲情」したからだった。
抱き締めて欲しいしキスもして欲しい。高校生なんだからその先も。
だが自分を友達としか見ていない男にその気持ちを伝えるのはまだ、難しいのだ。
眠ってる安形に心の中でこう呟くのが精一杯。
好きだよ。
想い続けた先の未来が安形の未来と交わること。それが今の俺の願いだった。



ふと目を開けるとなんだかいい匂いがした。(きらきらしていた)
状況把握のできていない脳みそを置いて、目に入ったのはすぐ側で勉強に励むミチルの姿。奴は自分が目を覚ましたことに気付かず長めの髪を耳にかけた。綺麗だと思った。
わざわざ起きたと言うのも億劫で、もう少しこうやってミチルを眺めていたい気がした。
それにしても、こいつは発光生物なのか。身体中からキラキラした粒子かなんかを放出している。無論目の錯覚だけど。
俺は榛葉道流に恋をしていた。
ミチルは、綺麗な顔はしているけど体つきも確かに男で。
別に同性愛者な訳でもない。
だけどこの男を可愛いと思ったし、抱きたいと思った。
張りのある唇ばかりを目が追う。
チューしてー。
告白できる気もせずする気もないけど。
それでも目の前のこの体に触れたいと思うのだ。



「おーい」
「わっ!安形、起きてたの?」
「…今起きた」
「ああそう」
「何やってんだおめー」
「え?勉強。俺たちも受験生なんだからちょっとは勉強しなきゃ」
「俺はいんだよ。IQ200だから」
「関係ないじゃん」
ミチルがからから笑い、釣られて安形も口元を緩めた。
いつか思いが届けばいいと二人は笑っていた。




――――――
ミチルがストライクすぎる。安形もタイプだった。
安榛はマイジャスティス。
title:さまよりお借りしました。

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