章用 DRRR

□君とふたり、部屋の片隅
1ページ/1ページ

「シズちゃんにフラれた」
泣きそうな顔で帰ってきた情報屋は、ただいまの代わりにそう言った。
淡白な助手はおかえりの代わりにあらそう、と返事をした。
何が気に入ったのが知らなくとも、臨也が天敵である平和島静雄と付き合っていたことを知っていた。そして、それが破局したことを知った。
臨也はくたびれた服のまま自分の椅子に座り込み、大きなデスクに突っ伏した。
波江はそんな臨也に一応の義務として苦いコーヒーを出した。
「何がいけなかったんだろ」
ポツリと黒い固まりが呟いて、それが涙声だったので横目でチラリと臨也を眺めた。
「知らないわ」
波江は独り言のように答えた。
ぐすりとも言わない臨也が夜毎平和島静雄を呼んで眠るのを知っていた。
同情のつもりはないわ、と言い訳のように思った。
「幸か不幸か」
波江は言った。
「私は女だから、あなたを体で慰めるなんてこともできるのよ。雇い主様」
「やめてよ」
臨也は顔を上げて僅かに悲しげな微笑みを見せた。
「今優しくされたら、惚れちゃう」
その茶色の瞳に涙は溜まっていなかったので、波江は何も言えなくなった。
「それは困るわね」
うん、と幼子のようにうなずいて臨也はまた腕の間に頭を沈めた。。
醒めた視線の先にあるのが、冷えていくコーヒーなのか寂しがりな彼なのか自分でもわからなかった。





――――――
不器用同士な臨波。
今気付いたんだがこのサイト臨波中心かもしれない。
title:様からお借りしました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ