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□魔法使いたちの一日
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赤四木 腹心の部下と闇の帝王




「残念ですよ、赤林さん」
闇に呟かれた言葉を赤林は沈黙をもって答えた。
背もたれの高い椅子に腰かけ、細い足を組んでいるのが決して名前を呼んではいけない、しかし誰よりも名前が知られているあの人である。
「四木の旦那、」
一番の部下はそれをいとも簡単に呼ぶ。
四木という名の帝王はほんのり眉をしかめた。
「俺はどうなるんですかね?」
「聞くまでもないでしょうに」
「ええ、そうでした」
赤林は微笑んだ。何が可笑しい、と思っても四木は口に出さなかった。
任務を果たせなかった赤林に罰が下るのは必然。ミスを犯した者には死を。それがこの王の鉄則だった。
赤林は幸せであるかのように薄く笑って口を開く。
「魔法をかける時って相手をずっと見てなきゃいけないでしょ?あんたに見つめられて死ぬなんて、これ以上イイコトはない」
狂ってる、とも四木は言わなかった。
ただその男の言葉に嘘がないことを知っていた。
「だからどうぞ、帝王」
恋人の抱擁を待つように両手を広げて赤林は死を歓迎した。
「アバダケダブラ」
四木が禁じられた呪文を呟き、赤林は息絶えた。
息を止めるその瞬間の唇に愛してると刻まれていたことを四木は知らないふりをした。
死に顔は恐怖の表情を浮かべていると言われるこの呪文でも、彼は満足そうな顔をして死んでいた。
閉じていない片方の瞳はまだ自分を映している。
心が裂けていくのを魂が割れる音だと勘違いし、孤高の帝王は胸の痛みに耐えた。




――――――
ラスボスな四木さんに萌える。
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