捧げ物

□悪魔の薬
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「完璧だ」


第八宮の研究室で桃色頭の男がいましがた完成した薬をうっとりと眺めていた。


「ふふふっ」


悦が入った声を漏らしながらフラスコに入った白桃色のどろりとした液体を小瓶に移すと、しっかりと蓋をし袴の裂け目に忍び入れる。


「さぁて、誰に試そうか」


今すぐにでも大笑いしそうになる口元を無理矢理引き締めて、桃色男は自宮から出ていくとゆっくりとしたペースでどこかへ向かって歩きだした。










怠い・眠い・面倒くさい
それが三拍子そろった会議はグリムジョーにとって苦痛でしかない。
しかも何を思ってか毎度毎度 熱い紅茶が出され、猫舌なグリムジョーを苦しめる。

今日もまたそんな会議が始まり、グリムジョーの目の前にはほかほかと湯気のたった紅茶が振る舞われた。

「では、成果を見せてもらおうかウルキオラ」

「はい」


いつものように藍染からの指名によって任務をこなしてきたウルキオラは、自分の目玉を躊躇うことなくくりぬき十刃たちの前で割ってみせた。

目を閉じ、流れてくる映像を見ると今回もまた上級虚たちを次々に殺していくウルキオラの手が見受けられた。
これぐらいのことならノイトラやグリムジョーにだって出来る事なのだが、いかんせん藍染が任務を回さない。
曰く「虚夜宮の守護をしてもらっているからね」らしいが、用は外で暴れてからちゃんと戻ってこない場合、回収するのが面倒くさいからと言うのが理由である。(従属官たちが連れて帰るからそんな事はないのだが)


「以上です。」

「ありがとう。今度も成功したようだね。よくやったよ。」


映像を見終わった藍染は、緩く微笑みを浮かべウルキオラを誉める。
他の十刃たちはその光景を別段なにも思ってない様子だが、グリムジョーだけは違った。
目の前に腰かけたウルキオラを仇のように睨みつけると、周りにも聞こえる音量で舌打ちをする。
ウルキオラはそれを意にも介さず、ほかほかと湯気をたてる紅茶に口をつけた。


「では次のことたが…」


そんなウルキオラを尚も睨みつけるグリムジョー。
グリムジョーは、自分より上にウルキオラがいるのが気にくわないのだ。
華奢で、女顔で、それなのに自分よりも強く頭の回転が早い、そんな存在のウルキオラがいけすかない。
その為、何度も何度もNo.4の座を奪ってやろうと試みたがその度に返り討ちにあった。
最近は少し大人しくしてはいるものの、機会を伺っているのは今も変わらない。


「という訳で、今度はウルキオラとハリベルに任務を任せるよ。
いい働きを期待している。では今日は終わろうか」


藍染が話しているあいだ中ウルキオラを睨みつけていたグリムジョーは、冷えて温くなってしまった紅茶を飲み干し(残すと東仙に小言を言われる)先に会議室を出ていったウルキオラに文句という名の僻みを言うべく後を追いかけた。


「藍染サマのお気に入りは大変だな」


自分の宮に戻ろうとしているウルキオラに嫌味のこもった声を投げれば、いつもは微動だにしない眉を僅かに潜めてウルキオラは振り返った。


「負け犬の遠吠えか」

「あ?」

「任務も任せられない塵が邪魔だ。退け。」


大きな眼を細め、嫌悪に満ちた視線をグリムジョーに遣る。
もう少し刺激すれば虚閃が飛んできそうなほど霊圧が揺れているのが肌でわかった。
グリムジョーはおちょくるような言葉を重ね、何の色も宿さないウルキオラの瞳に怒気という色を重ねようとする。

「なら無理矢理退かしてみろよ!!」
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