捧げ物

□白い記憶 下
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「…リ、ジョー」

「ウル…キオラ」

「グリ、…ジョー」

「──っ!! 俺はココだ!!」


頭を抱えて唸っていたウルキオラが突然、俺の名前を呼び出した


はっきりとじゃないが確かに呼んだ


「グリム、ジョー」


瞬間、どうなっても構わないと思った

ウルキオラを助ける事が出来るなら俺はどうなっても構わない

重くのし掛かってくる霊圧

辛いだとか、キツいだとか今はそんなのいらねぇ


「…くっ」

「あ゛、」


強く重い霊圧に押し返される

「…ムジョー…?」

砂という足にからまる物体に悪戦苦闘しながらウルキオラの元まで行き、震える体を抱きしめた時には一戦交えたあとのような倦怠感に包まれた


「大丈夫だ ちゃんと傍にいる」

「……」

「だから大丈夫だ」


ウルキオラを抱きしめている間も、揺らぎ続ける霊圧

しかし、それはだんだんと治まっていった


「…グリムジョー?」

「落ち着いたか?」

「あぁ」

数分後、あんなにも緊迫していた霊圧は消え去り辺りはまた静寂に包まれた

良かった…

「…痛い」

「わ、悪ぃ」


ウルキオラも冷静に戻ったようで心底、安心した

自然と籠った力に痛いと言う声が聞こえたが、少し緩めただけで腕はそのまま

やっと近くなったウルキオラを感じていたくて離せない


「グリムジョー」

「何だ?」

「…変わらないな」

「え」

「あの時と変わらない」

「お前…もしかして、」


あの時と言う言葉に、胸が震えた

「思い出したのか…?」

「あぁ」

泣き笑いの表情で笑うウルキオラ

また腕に力を込めた

記憶が戻ったことが嬉しくて、嬉しくて…

「俺の事も?」

「当たり前だ」

「……」

言葉に出来ない位嬉しい

つい涙が出そうになった

「泣きそうだな」

「うるせぇよ」

「もう大丈夫だ 忘れたりしない」
「当前だろ」

流れそうになる涙を隠すためにウルキオラの肩口に顔を埋める

すると、背中に腕が回ってきた

「これからはずっと一緒だ」

そんな言葉と共に

あぁ…愛しい

俺は肩口から顔を挙げて幸せそうな表情のウルキオラにキスをする

「好きだ」

「俺も」

広大に広がる砂の海

そんな途方もなく、何処か永遠に似たような砂漠でもう一度ウルキオラにキスをした──

fin

→あとがき
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