捧げ物

□魅惑の浴衣
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脱げだと!?

驚いて瞠目していると、藍染様に無理矢理服を脱がされた

主に手を出せる訳もなく俺はなされるがまま


「似合ってるよ」

「…ありがとうございます」


そうしてあっという間に浴衣を着せられた俺は、今、市丸様に髪をいじられている

浴衣ぐらい着れたというのに…


「ん、出来たで」

「…お上手ですね」

「あっちにおる時さんざんさせられたもんやから…自然と出来るようになったんよ」


俺がそう言うと市丸様は少し遠くを見ながら、懐かしそうな、愛しそうな表情をした

この人にも大切な人がいるのか

時おり寂しそうにしているのもそのせいだと合点した


「よし、じゃあグリムジョーにこれを渡しておいで その後はお祭りにでも行ってきたらいい」

「──っ ありがとうございます」

妙に納得していると、珍しく藍染様から直々に外出許可が出た

グリムジョーと一緒に…
素直に嬉しい

早くそれを伝えたくてなって、渡された浴衣を片手に持ち、藍染様の部屋から出ようとした


「あ、ちょっと待って」

「?」

「どうせなら下駄も持っていきなさい 浴衣に靴は無粋だからね」

「ありがとうございますっ」


二度目の礼を言ってから、今度こそ本当に部屋を出た

足取りは自然と軽くなる


「あ、ウルキオラ様お出かけですか?」

「あぁ」

「楽しんで来てくださいね」


途中、テスラに会った

いつもは何とも思わないテスラの笑顔に癒された

何故だかは知らない


「ウルキオラじゃないか
浴衣なんて着てどこに行くんだい?」

「祭だ」

「ふーん」

「用がないなら行くぞ」

「浴衣似合ってるね」

「……」

「お土産待ってるよ」


次はザエルアポロに会い、浴衣姿を誉められた

いつもはムカつく筈なのに今日だけは嬉しい

…何故だろうな


それから第6宮までにつくまでに何人にも声をかけられ、テスラやザエルアポロのような事を言われた

やはり嫌な気はしなかった


「グリムジョー」

「遅かった…な」

「何だ」


第6宮の扉を開けた瞬間、グリムジョーが目を見開いた

それに首を傾げながらも早く現世に行きたい為、渡された浴衣を差し出す


「着ろ」

「は?」

「祭に行くぞ」
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