短編小説
□Valentine
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今日は、世間で言う、2月14日・「バレンタインデー」だ。
街では、一週間も前から、この日の為にチョコやなにやらを売っている。
今日だってそれは例外ではなく、街はチョコの甘い香りで覆い尽くされた。
今、アジトの大きな厨房を使ってそのチョコを作っている人物がいた。
柄にもなくエプロンを付け、三角巾から覗く銀の髪は、彼…スクアーロの動きに合わせてしなやかに揺れるのであった。
ときどき、鼻歌を交えながら作業をするスクアーロを見守っているのが、ヴァリアーの母的存在のルッスーリア。
「う゛おっ、おいルッス!!!!見てみろ、コレ…良くねぇかぁ!?」
まるで、オモチャを貰ってはしゃぐ子供のように目を輝かせるスクアーロが、ルッスーリアに向かって試作品を差し出した。
「あらん??……まぁっ、大分上達したんじゃなぁい?」
「だよなぁ!! 味、見てくれぇ!!!!!」
「ふふっ、はいはい」
ルッスーリアは、傍らにあったスプーンを掴むと、一口掬い、口へと運んだ。
「なっ、なぁ、どうだぁ??」
「んー、美味しいとは思うけど、少し苦すぎじゃないかしら?」
そうルッスーリアに指摘されると、ニッコリと笑みを溢した。
「苦くていいんだぁ!!!それは、ボスの為に作ったんだからなぁ!!!!」
「あらあら、そうだったの。…なら、速く渡して来なさい?」
ある程度予想はしていたスクアーロの回答に優しく微笑んだルッスーリアは、彼の背中をトンッと押した。
「でも、片付けが…」
「ここは私に任せなさいっ♪」
そう言い、試作品ではない方、つまり、手を付けてない方をスクアーロに手渡し、手を振った。
「お…、おぅっ!!!!ありがとうなぁーー!!!!!」
――バタンっ
「ふぅ、何年たっても、ラブラブねぇ〜あの二人は」
片手を頬に当て、感心したように呟いた。
「ホント、良くもまー飽きないよね、ボスも」
「ムッ、スクアーロもだろ?」
「しししっ、そうだった♪」
「あら、二人とも…いつからいたのかしら?」
呆れた事に、ベルとマーモンがソファーに座っていたのだ。
まぁ、この部屋に来たとしたら、スクアーロと入れ違いになったか、ずっと身を隠していたかのどちらかなのだが。
「まあまあ、いいじゃん、そんなことはさ♪」
「…それより、僕たちにもスクアーロの作ったチョコレート、食べさせてくれないかい?」
マーモンはベルの腕から飛び降りると、フワフワと厨房の方に向かった。
「構わないわよ?……さぁ、召し上がれ。あ、そっちのは甘めにしておいたから」
「ありがとう」
マーモンがチョコを口に運ぶのを見ていたベルも、ルッスーリアにチョコを貰いに厨房に行った。
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