短編小説
□祝の言葉と祝福を
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「う゛ぅ…寒ぃ……」
雲ひとつない綺麗な夜空の下、スクアーロはかじかんだ己の手を少しでも暖めようと息を吹きかけた。
いくら春に近づく3月とはいえ、まだまだ夜は冷え込み、今夜は零度近くまで気温が下がっている。
隊服の首元に付いている暖かいファーをスッポリと被り、細くて長い足で雪を踏みしめていた。
人気がないこの辺。そのためスクアーロがつけた足跡意外に雪には何も跡がなく、白い息を吐きながら歩んでいく。
「予定よりだいぶ遅れちまったぁ……」
ポケットから携帯を取り出し、時刻を確認すると任務が終わる予定より30分ほどロスしてしまっていた。
もちろん、ミスはなかったのだが、雪が降っていたとは知らなかったため、
迎えの車も呼べず、こうして一人、冷たい雪の道を歩いているのだった。
ヴァリアーのアジトからそんなに離れていない目的地だったので、多分20分ほど急ぎ足で歩けば戻れる距離だったが、
この有様では悠々40分は掛かるだろうことを予想して、白い吐息と共にため息を吐いた。
自分がこんなに寒い思いをしているのにもかかわらず、我らがボスXANXUSは暖房のついた部屋、
もしくは暖炉がある談話室でのんきに寝ているのだろうと想像するだけで自分が惨めに思えてくる。
あぁ、こんな事なら強がって一人で行くなんて言わなければよかった…。
下っ端がいればまだ状況は今よりは良かったばずだ。……多分。
数十分歩いたとき、森の中に佇むアジトの光が遠くにぼんやりと見えてきた。
スクアーロは赤くなった鼻を啜ると、歩く速度をあげ、アジトへ向かった。
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