短編小説
□Valentine
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そんな中、スクアーロは鼻歌を交えながら主君の元…XANXUSの部屋に向かっていた。
まぁ、先程いた大広間からはそんなに離れていないので、すぐについてしまう訳で。
「……よし、」
大きく深呼吸を繰り返すと、普段ではほとんどしない、ノックをしてみる。
もちろん、入った途端にモノが投げつけられて折角作ったティラミスがぐちゃぐちゃにでもされたらひとたまりもないからだ。
――コンコン
「あの…俺だぁ」
「入れ」
ガチャっと音を立てて大きな扉が開かれる。
「何の用だ?」
XANXUSは書類整理の途中らしく、ふちがないインテリ系のメガネをかけ、万年筆をもっていた。
「ぁ、仕事中だったかぁ…いや、終わるまで待ってるぞぉ」
「…………」
スクアーロは気を使い、持っていた皿を背中に回したのを、XANXUSは見逃さなかった。
少し考える素振りを見せると、溜め息を吐きながらメガネを外した。
「いや、少し休憩にする…カス」
「お、おぅ…」
XANXUSはそう言うと、手でスクアーロを手招きし、隣に寄こした。
何だかんだ言って、結局スクアーロには甘いのだ。
「その、後ろに隠してんのは何だ?」
すかさずXANXUSがそう尋ねると、スクアーロは肩をビクリを震わせた。
「え、と・・・その・・・」
「あ・・・?」
ごにょごにょ何か言っているスクアーロに苛立つXANXUS。
スクアーロもそれに気づいたのか、やっと口を開いた。
「…ボス、今日が何の日か知ってるかぁ?」
遠まわしに話を進めるスクアーロだったが、XANXUSにはその一言で言いたい事を察した。
「Valentine…Day」
「……っ!」
XANXUSが知っているなんて思っても寄らなかったスクアーロは、
一瞬目を見開いたが、そんな事を口に出せる筈がなく、表情を隠した。
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