短編小説
□昼下がり
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「なんだよ…こんなところで寝てやがって」
自分でも口元が緩んでいるのが分かる。
要は、スクアーロはXANXUSに会えて嬉しいのだ。
良く見ると、先程のスクアーロの大声にも目を覚まさないXANXUSは、
具合が悪くてここで寝ているわけでもなく、ただ単に昼寝をしているようだった。
いつものような眉間の皺はなく、寝顔はまるでただの少年そのもののようだ。
「XANXUS……」
スクアーロは自分でも無意識のうちに、XANXUSの寝顔を覗きこんでいた。
「……う゛ぉっ!?」
視界が一転したかと思えば、自分とXANXUSの位置は逆になっていて、スクアーロはベッドに抑えつけられていた。
「う゛ぉい……お前、起きて…」
「テメェの気配なんざすぐ分かる。…なんだ?寝込みでも遅いに来たか?」
「…ちっ、違っ……」
耳元が弱いのを知っていて、ワザとそこで囁くXANXUSの声に、思わず反応してしまう自分が憎い。
それを見かねたXANXUSはニヤリと口角を上げると、スクアーロの柔らかな唇に己のをあてた。
何度か違う角度からキスをすると、次は噛みつくように深いキスをする。
「ふっ…んぅ、あ……ふ、ぁ…ン」
名残惜しそうにチュッと唇を離すと、スクアーロの白い首元にXANXUSは顔を埋めた。
「……う゛、おぃ?ザ、ザンザス……?」
「うせぇ、眠くなった、俺は寝る」
「なっ!!!…んな勝手に……」
「テメェは俺の護衛でもしてろ」
「――…〜〜〜〜〜〜っ」
折角乗り気だったスクアーロは、このまま寝てしまうXANXUSを見つめ、悲しそうに眉を潜めた。
「……ホントに、寝るのかぁ?」
「……」
寝た振りをしているのか、何も返事をしてくれないXANXUSにスクアーロは溜め息を吐いて、背を向けた。
「……う゛ぉっ!!!!」
突然、腹にXANXUSの両腕が回って来て、がっちりとホールドされてしまった。
「……なんだぁ?」
「起きたらシてやる……それまでは、テメェも寝てろ」
後ろから耳元で囁いたXANXUSの声は寝むそうで、本当に限界が近い事をスクアーロは悟った。
「…護衛しろっつったり、寝ろって言ったり……一体どっちだよ」
「………」
冗談交じりにXANXUSに話しかけたが、返答はなく、首をひねって確認すると、すやすやを寝てしまっていた。
『起きたらシてやる』
その言葉がスクアーロの脳内でエンドレスに流れ始める。
一体自分は、何を期待しているんだと。己に言い聞かせ、困ったように笑って
「……しょうがねぇなぁ」
と、一言。身体を捩じらせ、XANXUSの腕の中で、向かい合うように体勢を整える。
そして、いつもなら皺があるはずの額にキスを落とし、また一言、
「おやすみ、XANXUS……」
END