短編小説
□祝の言葉と祝福を
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「ふ、あぁ…」
スクアーロとはうって変わって、暖かい暖房の付いた部屋で、XANXUSは大きな欠伸を1つ。
コツコツとブーツの音を立て、外からの冷気が伝わってくる窓側へと近寄って、真紅のカーテンを捲った。
「あのカス…」
雪が積もる庭園の向こう、スクアーロが玄関に入るのが丁度窓から見えた。
内心、予定より遅れていたスクアーロの帰りに、ヒヤヒヤしていたXANXUSは、
何事もなかったのを確認すると、頬を緩め、嬉しそうに呟いた。
そして、まっ先にこの部屋へと来ることが分かっているので、わざと何も知らないようにデスクへと再び座る。
デスクに散らばっていた書類をどかし足をドカリと乗せ、扉へ視線を向ける。
「3…2……」
………1。
「う゛ぉぉおい!!!!」
XANXUSが小さくカウントをし、それに合わせるかのようにピッタリとタイミングよくスクアーロが部屋に入ってきた。
吹き出しそうになるのを堪えると、XANXUSはスクアーロに視線を移した。
「報告書はどうした」
「あ、あぁ…これだぜぇ」
寒さで疲れきっているのか、力なく紙切れをデスクに置く。
殴り書きなので、ほとんど読めないものとなっていたが、今日は大目に見てやることにしよう。
なんて言ったって、今日は彼の『誕生日』なのだから…。
「はぁ…疲れた……雪が降ってたなんて想定外だったぞぉ」
ソファにどさっと音を立てて座ったスクアーロを横目で確認すると、
フンッと鼻を鳴らして「作戦隊長なら把握しとけ」と笑った。
それに「う゛―…」と言い返す言葉もなく唸るスクアーロ。
そんな、いつもの彼なら決してしないであろう仕草を、自分の前ではなんの躊躇もなくするところがまた愛おしい。
「カス、目ぇ瞑れ」
「あ゛…?なんで…」
「早く」
いきなり意味のわからないことを言われ、戸惑いを示したスクアーロだったが渋々目を瞑った。
「な、何すんだぁ……?」
律儀に目は瞑ったまま、首だけをXANXUSがいるであろう方向に向けて問いかけるが、
XANXUSは聞こえないとでも言うようにそれを無視して、デスクから離れると寝室へと向かった。
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