書庫

□水玉ピンク
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放課後。

晶が深華の教室へ迎えにきた。

「深華。帰るぞ」

その声は教室中に響き渡り、女の子達からは非難の声が上がる。
深華は恥ずかしくて真っ赤になりながらも、廊下で待っている晶のもとへ急いで出てきた。

緊張しながら、晶と並んで歩く。

晶の横にいると、女の子達からすごい注目を浴びる。
女の子達の、嫉妬と羨望の入り混じった視線に、深華は気づかないふりをして歩いた。

ふと、晶はどんな顔をしているのかと思って横を向くと、目の前に晶のシャツの第一ボタンがあった。

深華は女子ではけっこう身長が高い方だ。
165センチある。
それなのに、目線が晶の襟元までしかない。

『すごい……。
松本くんって、身長高いんだ…』

晶と深華が並ぶと、まるでモデルみたいで、端から見るとかなり似合いのカップルだった。

深華が顔を上げて晶を見ると、彼は気にした風もなく、普通に前を向いていた。
晶にとっては、こんなのは日常茶飯事なのだ。

『松本くんと付き合うなら、これくらいの視線にビビってちゃだめよ!』

深華は、そう自分に言い聞かせると、しっかりと前を向いた。

そして、深華はこの数日ずっと気になってたことを口にした。

「松本くん。
…この前は、いきなり叩いたりして、ごめんなさい」

「いや、もう気にしてねーし。
だいたいあれは、俺も悪かったんだし…。
その、悪かったな。
じっと見て」

「あっ…!」

不意に、晶にパンツを見られたことを思い出して、深華の顔が真っ赤になった。
恥ずかしい…。
深華は羞恥に顔を俯けた。

「ていうか、その松本くんってのやめろ。
なんか気持ち悪いから」

「じゃあ…、晶くん?」

「くんとかいらねー。」

「…あ……晶」

「おう。それでいい」

「……………。」

深華は、恥ずかしくて顔が火を噴きそうに熱くなった。
きっと今、自分は茹で蛸のようになってるに違いない。

そんな深華を見て、晶がまた可笑しそうに笑った。

「すっげー真っ赤。
なに、恥ずかしいの?」

「べ……別に!」

反論するが、晶の顔を見ることができなかった。

「こんくらいで恥ずかしがっててどうすんだよ?
…お前って、今まで男と付き合ったことないの?」

「……あるわよ。
付き合ったことくらい」

「へぇ…。
じゃあ、もうキスとかセックスとかも経験済みなんだ?」

晶が目を細めた。

「バッ………馬鹿!
急になに言うのよ!」

「は?
俺、なにか馬鹿なこと言ったか?
付き合ったことあるなら、当然、経験済みなんじゃないの?」

「……………。
キスくらい……」

「だよなぁ?」

言うなり、晶が深華の肩を掴んだ。
なにをしようとしているのかわかって、深華は焦る。
その間にも、晶の顔がどんどん近づいてくる。

「ちょっ…待って!
うそよ!
本当は初めて…なのっ!」

深華が降参して叫ぶと、耳元で晶の笑う声が聞こえた。

「最初から素直にそう言えばいいんだよ」

「だって…面倒くさいでしょう?
キスも初めてとか言ったら…」

「なんで?
俺は、お前が初めてじゃないって思ったら、なんかむかつくんだよ」

「……そうなの?」

「ただやるだけなら、そりゃ初めてじゃない方が面倒くさくなくていいかもしんねえけどな。
一応俺たちつきあってんだろ?」

「うん」

「俺は自分の女に過去のやつがいたら、むかつく方だから」

それって、嫉妬?
晶が自分と付き合ってるのがただの興味だけだとしても、少しは自分のことが気になってるんだとわかり、深華は嬉しくなった。
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