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□お菓子な訪問者〜はじまりの夜〜
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次の日も、お兄ちゃんは優里と一緒に遊んでくれた。
そして、ママが迎えにくると、パッといなくなってしまう。
毎日、優里が一人ぼっちで寂しい時、『お兄ちゃん』と心の中で呼ぶと、お兄ちゃんは必ず現れた。
だけど一週間後、パパが急に日本へ引っ越すと言った。
優里がどうして?ときくと、パパは『ちょっと長く居すぎた』って言った。
優里にはなんのことだかさっぱり意味がわからなかった。
でも、お兄ちゃんやお友達と、もう会えないんだということはわかる。
優里は悲しくてわーんと声をあげて泣いた。
パパが「ごめんな」と困った顔で何度も頭を撫でて慰めてくれた。
優里が生まれてから7年間いたこの地とも今日でさよなら。
せめて、お兄ちゃんにお別れを言いたかったのに、飛行機の時間で、何も言えなかった。
ごめんなさい。
お兄ちゃん…。
優里は首にかけた石を見つめて、心の中で謝った。