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□お菓子な訪問者〜はじまりの夜〜
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日本にいるとわかれば、優里を見つけ出すのは簡単だった。

優里にあげたあの石は、彼女の身を守ってくれるけど、ある程度の範囲にいれば、探知機のように俺に優里の居場所を教えてくれる。

優里はマンションの5階に一人で住んでいた。

その日はちょうどハロウィンで、優里の家にいく口実にはもってこいだった。
ヨーロッパではハロウィンは一般的だから、日本にいる優里がとまどうのは予想してなかったけどね。

俺は前もって、20才くらいの姿に変身していた。

優里は突然の訪問者に疑いもせずにドアを開く。

ドアを開けてもらった俺が言うのもなんだけど、夜中に女の子が一人で住んでるところに、男が訪ねてきてるんだよ。
普通はもう少し警戒するだろう。
危なっかしいところは、あの頃と全くかわってないんだな…。

だけど、12年ぶりに見た優里は、あの頃よりずっと綺麗になっていた。
ふわふわの髪を伸ばし、幼くてあどけなかった顔が大人の女性へとかわっている。
でも、やっぱりどこか当時の面影が残っていた。

12年ぶりに優里に逢えた喜びに、俺は襲いかかりたい衝動を必死にこらえ、用意していた言葉を紡いだ。

「trick or treat?」

優里はぽかんと口を開けて俺を見つめている。
そんな顔もかわいい。

それから、やっと俺が危険だと気づいたのか、ドアを閉めようとした。
でも、もう遅いよ…。

俺はゆっくりと優里に近づき、彼女を追い詰める。

俺の中の悪魔の血が優里を怖がらせたいと騒いでる。
きみの涙ぐむ表情がたまらない。

だけど同時に、きみに優しくしたいとも思うんだ。

追い詰められたきみは、必死に逃げる手段を探している。

悪魔の俺に向かってハサミを構えるなんて、かわいい抵抗をするね。
けっこう気が強いのかな?
だけど、そんなおもちゃじゃ俺にはかすり傷一つつけられない。

怖いのに果敢に立ち向かってくるきみがかわいそうでかわいい。

愛しいきみにやっと触れることができて、肩をつかんだ手につい力が入ってしまった。
きみの悲痛な声に、俺は我にかえる。
今度はそっと抱きしめて腕の中に閉じ込める。

瞳をじっと見つめてあの日の約束のキスを繰り返す。

優里…
やっときみをつかまえた……
もう、はなさないからね……



end
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