書庫
□先生のとなり〜私の特等席〜
1ページ/27ページ
4月
「うー…寒い」
日差しは暖かいが、風は冷たく足がスースーする。
真新しい制服を着て歩いていくと、その先に淡いピンク色の花が見えてきた。
「桜だぁ〜」
校舎を囲むように桜が並んでいて、すごく綺麗…
校門をくぐると同じ制服の人がたくさんいた。
ざわざわとしたそこに近付いてみると、新入生クラス表の文字。
「山下…山下…」
少し背伸びをして、1組から順に自分の名前を探す。
「山下…茜!あった!」
6組か〜友達出来るかな…
何度も名前とクラスを確認してようやく私はその場を離れた。
[まもなく入学式が始まります。新入生は体育館に入ってくださ〜い]
スーツの先生っぽい人の言葉に、生徒がぞろぞろと進んでいく。
椅子に座って校長の話が始まり、退屈な時間。
落ち着かない…
期待と不安でそわそわする。
ふと気付いた頃には、先生の話は終わり、何人もの先生がステージに並んでいた。
担任の先生か…
校長先生が左から順に紹介して一人ずつお辞儀する。6番目の先生の紹介
うわ、かっこいい…
遠巻きでもわかるほど背が高くて細身で、黒髪の男の人
遠くて顔までは見えなかったけど、いかにもモテそうな感じ…
先生はその長い身長を曲げて頭を下げた。
ひそひそと女子の楽しそうな声が聞こえる。
………絶対モテる。
私がそう確信している間に、入学式は淡々と終わり、新入生はそれぞれの教室に移動する。
「あのっ、一緒に行ってもいい…?」
椅子から立ち上がった時、前に座っていた子が小さな声で話しかけてきた。
「うんっ!一緒に行こっ」
背が低くふわふわと髪を揺らすその子はほっと息をついて笑った。
…可愛い。
「私、山下茜。よろしくね」
「よろしくね。私は柳瀬麻衣だよ。」
すぐに友達が出来て心の中でほっとしながら、私たちは人の波に沿って歩いた。
「番号近いから席も近いかな?」
「だったらいいね〜。あ、紙貼られてる」
教室のドアに張り出された席を確認する。
出席番号の遅い私は、廊下側の後ろから3番目。
麻衣ちゃんはその前。
「席近くてよかったね」
ふんわりと笑う麻衣ちゃんとしばらく話していると、がらがらと扉が開いた。
「ほら、席つけー」
少し低い声と共に男の先生が入ってきた。
みんなはわたわたと席につくと、知らない先生に緊張しているのか、しーんと静まり返った。