書庫
□水玉ピンク
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昨日からしとしと降り続いていた雨がようやくあがり、空には晴れ間が見え始めた昼下がり。
松本晶(まつもとあきら)は食堂から、理科室へと通じる中庭を急いでいた。
午後の授業開始まであと5分。
午後一の授業を眠くてさぼりがちな晶は、次さぼったら単位をやれないと先生に言われていた。
この高校は単位制で、一年間で必要な単位をとらないと留年が決定する。
なので、たとえ眠気MAXでも、今日はさぼるわけにはいかない。
中庭は近道だが、今日の様な日はできれば通りたくない。
ぬかるみが多くて歩きにくいし泥が跳ねて靴やズボンが汚れるからだ。
案の定、晴れた日にはいつも学生のたまり場になっているのに、今日は誰もいなかった。
晶だって、いつもの調子で昼食の後にうっかりうたた寝さえしていなければ、この道を通ることもなかっただろう。