書庫

□お菓子な訪問者3
1ページ/29ページ

「こんばんは」

日曜日、夕飯を作っていたら、いきなり耳元で声がした。

「ひゃっ!!」

あんまり驚いておまけにゾゾッと鳥肌が立って、危うく包丁で指を切るところだった。

「誰……!」

振り返ろうとしたら、誰かに後ろからぎゅっと抱きしめられる。

「…久しぶり、優里」

また耳元に息を吹きかけられて、ぞくっとしながらも、なんとか顔だけを後ろに向ける………あいつだ!

「変態悪魔!!」

「………俺の名前はジャックだよ」

変態悪魔はちょっと笑って答えた。

「ちょっ…離して〜〜〜!」

この状況は危険だ。

私は悪魔の腕の中でもがき、力が少し緩んだのを見計らって、急いで腕の中から抜け出して距離をとった。

「なにしにきたのっ!?」

「そんなに警戒しないでよ」

「だって……また変なことするつもりでしょ?」

「変なことじゃなくて、いいことだよ」

「私には、よくないの!
だいたいどこから入ってきたのよ?」

「悪魔だから、どこからでも入れるよ」

う…そうだった…。

「…それで、本当になにしにきたの?」

「この前の続きを……わっ!
危ないなぁ。
こんなもの振り回したらケガするよ」

言うなり持ってた包丁を一瞬で消された。

ムカつく…。

他に武器になるものはないかと周りを見回すと…

あ、あった!
バット!

「…………いいけど、それで殴ったら速攻で襲うからね」

側にある金属バットをとろうとしたら、次の行動を見抜かれて脅される。
うぅ〜。
どうすればいいの…。

「…もう、この前みたいな手には、かからないんだから…」

私はまた催眠にかけられないよう、ジャックの目を見ないように気をつけて言った。

「だから、あれは一度しか効かないんだってば。
…そんなに怖がらないでよ」

なおもじりじりと距離を開けながら後退する私に、悪魔は大きなため息をついてから、言った。

「この間は、ごめんね」

いきなり素直に謝られてびっくりする。

「っいまさら…
あんなことしたくせに…」

「やっぱり怒ってる?」

「当たり前でしょ?」

「ごめん。
許してくれるまで謝るから…」

「………………。」

こんなに下手に出られると、なんだか強く怒れない。
この前とは打って変わって別人みたいな悪魔に、なんだか毒気を抜かれてしまう。

「本当にごめんね」

「………………。
も、もういいよ」

「本当?
じゃあ、許してくれる?」

「うん…」

「やった!」

無邪気に喜ぶ悪魔はなんだか子どもみたいで、怒る気も失せてしまう。
…まぁいいか。
こうして謝りにきてるんだし。
やっぱり、なんとなく憎めないし…。

私は仕方なくこの前のことを許してやることにした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ