書庫
□私の隣
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「央太〜!」
自分の部屋の窓をガラリと開けて、屋根づたいに隣家のベランダによじ登った私は、隣に住む幼なじみを呼んだ。
水色のカーテンの閉まった窓をゴンゴンと叩く。
しばらくすると、カーテンを開けて、央太が窓の鍵を開けてくれた。
「またこんな所から来て。
奈々ちゃんも女の子なんだから、やめなよ」
央太は呆れながらも私を部屋に入れてくれた。
「だって、ここからの方が早いんだもん。
それよりさ、明日の英語、もう予習終わった?
私、明日当たりそうなの。訳見せてくれない?」
「たまには自分でやりなよ。
いつも俺の写してばっかりじゃないか。」
ぶつぶつ文句を言いながら、央太はノートを見せてくれる。
なんだかんだいっても、優しいんだ。
私と央太は幼なじみ。
家が隣りで幼稚園からずっと一緒だ。
央太は優しくて少し気が弱そうに見えるから、昔からよく男の子からいじめられていた。
私はとても勝ち気で、いじめっこたちとけんかしては、いつも央太を守ってきた。
でも中学に入ってからは、央太はいじめられなくなった。
学年で一番頭がいい央太は、みんなから一目置かれるようになった。
それでも、私たちはずっと仲のよい幼なじみだった。
頭が悪い私に、央太は毎晩勉強を教えてくれて、そのおかげで、私は念願の央太と同じ高校に入ることができた。
でも最近、央太は私と一緒にいてくれない。