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□とある王家の恋物語
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エレンシアは、ついこのあいだ16才の誕生日を向かえたばかりの少女だった。


このザナ王国は、ほんの数時間前に戦争に敗れた。
敵は、川で隔たれた隣りのランドゥール王国。

もともと、ランドゥール王国とは友好関係にあり、年に一度の国王同士の会談に、王家みんなで訪問するほど仲が良かった。

しかし、エレンシアの祖父にあたる先代のマドラン王が亡くなってからは、頻繁に領土を巡って争うようになった。

二つの国は小さな争い事を繰り返していたが、ついには今回の戦争にまで発展してしまった。

商業が盛んで、財も武具も備えたランドゥール王国と、農業や漁業で生計を立てているザナ王国。
どちらが戦いに有利かは一目瞭然だったが、ザナ王、ゲヴォルトは、他国に応援を頼み、戦争は4年間も続いた。

その間、兵士として駆り出され、その上高い税を払うことを強制された国民は、ひどい生活苦に陥っていた。
国民たちは戦争を止めるよう何度も国王に願い出たが、王は願いを聞き入れず、ついに民の反感を買った。



その頃ランドゥール王国では、次期国王のカイル・ゼ・ランドゥールが軍の総指揮をまかされるようになっていた。

彼はとても頭がきれる男で、密偵を使って国民の王への不満を知ると、密かに彼らと取り引きをした。
すなわち、抵抗せずに王城までの道を開けば国民は助けてやる…と。

こうしてカイルは、ゲヴォルト王がいる王城だけを驚くほど早く攻め落とした。


エレンシアは城が敵の手に落ちる寸前に、ルカと二人、秘密の抜け道を通ってこの崖まで逃げてきたのだった。
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