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□sweet time
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僕、小崎亮平(おざきりょうへい)は悩んでいた。
水野さんと付き合い始めたあの夢のような一日から約一週間がすぎた、ある日の昼休みのこと。
僕は加藤と学食で昼食を食べながらしゃべっていた。
自分のカツ丼を食べ終えた加藤が、何気なく僕に訊いてきた。
「お前、最近水野さんとうまくいってんの?」
「え?…うん。…まあまあ」
「ふ〜ん。だけど、お前らっていつも別々だよな。一緒にめし食ったりしねぇでいいの?」
「……うん」
「なんだよ。歯切れわりぃな」
いつも思うが、こいつって、マジで超能力者かなんかか?
まさに今、僕はそのことで悩んでいた。
クラスでも、僕たちが付き合ってるということを知っているのは、加藤と後は水野さんと仲のよい女子二人くらいだった。
水野さんは僕たちが付き合ってることを、あんまりみんなに知られたくないみたいなんだ。
だから、学校では僕たちはなんとなくよそよそしくしていた。
もちろん、帰りは一緒に帰っている。
だけど、それもクラスメートが帰っていくのを待って、最後の方で教室をでて、玄関で待ち合わせて帰るという面倒な裏工作をしてのことだ。
なんで知られたくないのかなぁ…。
僕はため息をついて加藤に尋ねた。
「なぁ。
僕たちが付き合ってること、お前以外に知ってるやついる?」
「いや〜いないんじゃねぇの?」
「そっか」
一応、裏工作はうまくいってるようだ。
「女子ってさぁ、付き合ってること秘密にしたいもんなのかなぁ?」
「え?まあ、人それぞれじゃないか。
てか、水野さんてそうなんだ?」
「はっきり言われた訳じゃないけど、なんとなくそんな感じ」
「げ、面倒くせぇ女」
「…面倒くせぇとかいうな」
僕は憤慨して加藤の頭をべしっと叩いた。
「いてっ!」
確かに裏工作やら人の目を気にしてすごさないといけないのは面倒だけど、面倒なのはその行為であって彼女じゃない。
水野さんはおとなしいから、人に知られたくないという気持ちも、まあなんとなくわかるし。
ただ、学校で一緒にお昼を食べたり、休み時間に話したりできないのはけっこう嫌だ。
僕たちはやっと付き合い始めたばかりなんだ。
もっと周りなんか気にせずに水野さんと一緒にいたい……。
はぁ〜。
僕はまた一つ大きなため息をついた。
好きな人と付き合うって、もっと毎日楽しいことばかりだと思ってたのに。
なんでこんなにため息ばかりついてるんだろう…。