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□sweet time
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そうして、さらに何日かがすぎた。
もうすぐ僕たちの学校では文化祭がある。
僕は美術部員なので、文化祭に向けて一人一枚絵を描くという課題で、放課後は毎日美術室で絵を描いていた。
うちの学校はかなり真面目な進学校で、文化祭といってもお祭りというようなイメージはない。
内容もその年によって様々で、今年は文化祭初日に各クラス一曲ずつステージで合唱をすることになっていた。
どのクラスも、毎日30分交代で音楽室で歌の練習をしていて、僕も美術部の前に練習に参加している。
ちなみに、水野さんはピアノだ。
彼女は子どものころピアノを習っていたらしく、かなり上手い。
初めての練習の時、彼女が一番前で伴奏をしているのを見て、僕はとても驚いた。
いつもは大人しい水野さんが、堂々とピアノの鍵盤を叩いて美しい音楽を奏でている。
自慢じゃないが、僕は『ねこふんじゃった』もまともに弾けない。
右手と左手をバラバラにあんなに速く動かせるということに、まず感心した。
そして、水野さんの新たな一面を見つけてすごく感動した。
いつもと違う彼女の真剣な横顔、鍵盤を流れるように動くきれいな指、そして美しいメロディー、彼女のピアノを弾く姿に僕はずっと見とれていた。