書庫

□お菓子な訪問者1
1ページ/8ページ

ピンポーン

大学から帰って一人で夕飯をすませ、のんびり雑誌を読んでいると、来客を知らせる音がした。

もう夜の9時。
こんな時間に誰だろう?
宅配かな?

「は〜い!」

私は髪の乱れがないか鏡で確認してから、ドアを少し開けて外を覗いた。

ドアの前には、背が高くてかっこいい顔をした黒尽くめの男の人が立っていた。
誰?
私が戸惑っていると、

「trick or treat?」

彼の口から流暢な英語が流れてきた。

「……はい?」

一瞬、何を言われたのかわからず聞き返し、すぐに「ああ!」と理解する。

そういえば今日はハロウィンだったな、と思い出した。

今、trick or treatって言ったのよね?
えっと、『お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ』だったっけ?

日本ではハロウィンはそれほどなじみのある行事ではない。
まして、家に誰かがお菓子をもらいにくるなんて、私には初めての経験だった。

でも、この人、子どもじゃないんだけど…?
目の前の人は、私とあまりかわらないか少し上くらいに見える。
二十歳くらいの若い男の人だ。

ハロウィンって、大人もお菓子をもらいにくるんだっけ?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ