書庫
□お菓子な訪問者1
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ピンポーン
大学から帰って一人で夕飯をすませ、のんびり雑誌を読んでいると、来客を知らせる音がした。
もう夜の9時。
こんな時間に誰だろう?
宅配かな?
「は〜い!」
私は髪の乱れがないか鏡で確認してから、ドアを少し開けて外を覗いた。
ドアの前には、背が高くてかっこいい顔をした黒尽くめの男の人が立っていた。
誰?
私が戸惑っていると、
「trick or treat?」
彼の口から流暢な英語が流れてきた。
「……はい?」
一瞬、何を言われたのかわからず聞き返し、すぐに「ああ!」と理解する。
そういえば今日はハロウィンだったな、と思い出した。
今、trick or treatって言ったのよね?
えっと、『お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ』だったっけ?
日本ではハロウィンはそれほどなじみのある行事ではない。
まして、家に誰かがお菓子をもらいにくるなんて、私には初めての経験だった。
でも、この人、子どもじゃないんだけど…?
目の前の人は、私とあまりかわらないか少し上くらいに見える。
二十歳くらいの若い男の人だ。
ハロウィンって、大人もお菓子をもらいにくるんだっけ?