書庫
□水玉ピンク
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晶は水たまりをよけながら中庭を突っ切っていく。
ふと、向こうから女の子が携帯をいじりながら歩いてきた。
彼女は携帯の画面に夢中で、あと三歩で水たまりがあることなど全く気づく様子もない。
そして晶がそれに気づいた瞬間―――
「あ………」
バシャン!
女の子は見事に大きな水たまりにはまった。
スカートはかろうじて無事だが、脚には泥水が派手に跳ね上がって、靴なんか中までぐっしょりといった感じだ。
当の彼女は呆然と水たまりの中で立ち尽くしている。
目の前で起きたギャグのような出来事に、晶はついじーっと彼女を凝視してしまった。
水たまりに、彼女の膝上丈のスカートから伸びた綺麗な脚が映りこんでいる。
さらには………
「白地にピンクの水玉……」
晶は水たまりを見つめながら、見たままをついぼそっと口に出していた。
しまったと思った時には、彼女のほっぺがみるみる赤く染まり
「……見ないでよ!!」
晶の左のほっぺに強烈な平手打ちがとんできた。
晶は驚き、一瞬遅れてジンジンしてきたほっぺを押さえながら、反論する。
「……別に、見たくて見たわけじゃねぇ!
だいたい、そっちが悪いんだろ。
そんなとこにぼーっと突っ立ってるから」
「………悪かったわね……嫌なもの見せちゃって!
どうもすいませんでした!」
彼女は怒ってそう言い捨てると、靴をグチュグチュいわせながら去っていく。
走っていく彼女の後ろ姿をしばらくぼーっと見ていた晶は、始まりの鐘の音にハッと我に返り、慌てて自分も理科室へと走っていった。
授業にはちょっと遅刻したが、なんとか単位は落とさずにすんでほっとする。
授業中、晶はさっきの彼女のことを考えていた。
『なんなんだあの女……。
あんな気が強い女、見たことねぇ…』
叩かれた頬に手をやると、まだ少しひりひりして痛む。
しかし、さっき見てしまった彼女のすらりと伸びた綺麗な脚と、ピンクの水玉模様のパンツが、晶の頭にこびりついて離れない。
『あいつの顔、どっかでみたことあるんだよな…。
たぶん同じ学年だ。
…何組のやつだ?』
晶は授業の間、なぜかさっきの彼女のことが忘れられず、気になって仕方がなかった。