企画◆

□あなたのうしろに
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青空、吹奏、入道雲。
私が思う夏の代名詞はこれだ。

カラッと晴れた青空にもこもことした入道雲があればそれだけで一気に夏らしくなる。
そして吹奏とは吹奏楽部のこと。
夏の甲子園で吹奏楽部が野球部を応援しているのを見る人も多いはずだ。
……とまぁ、当たり障りのないことを言ったけど本当の理由は単純で、私が吹奏楽部に入っていたからだ。
夏のあの暑い時期に熱のこもった金管楽器をかついで学校の4階まで上り下りしたのも今では良い思い出だ。





私は階段の一番上に座って足をぶらぶらさせる。
自分で言うのもあれだけど、透けるほど白くなった肌がとても不健康そうだ。
小学生の頃までは外で遊び回っていたから真っ黒に日焼けしていた時期もあったけど、今ではそんなこと考えられない。

肌を見ながらぼーっとしていたら、階段の下を数人の男の子が通りかかった。
持っている荷物から判断すると、どうやらサッカー部の部員らしい。
彼らは私に気づかず、わいわいと騒がしく廊下を歩いていく。
耳を澄まさなくても会話が聞こえてくる。

「……だからマジなんだって。うちの学校、幽霊が出るんだって!」
「そんなん、ぜってー嘘だ」
「嘘じゃねーって!」
「あぁ、その話、俺も聞いたことあるな」
「俺も俺も」
「マジで?なんでみんな知ってんの?」
「お前が知らねーだけだろ」
「確かおっさんの幽霊だっけ?」
「えっ、何それ、きもっ」
「あれ?俺が聞いたのは小学生くらいの女の子の霊だったけど」
「そうなのか?俺が知ってるのは高校生の女だった」
「バラバラじゃねーか!」

そうだ。
彼らの会話を聞いてもうひとつ忘れていたことがあった。
夏の代名詞、「幽霊」の存在を。

私がそれを思い出していると、彼らの内のひとりがこんなことを言い出した。

「だからさ、今度肝試し行かね?」
「だるっ。行くんならひとりで行けよ」
「なんだ、ビビってんのかよ」
「ビビってねーよ」
「ビビってんだろー」
「うるせえ!ビビってねえって言ってんだろ!」

明らかに強がっている言葉なんだけどなぁ、と私は彼らに見えないように苦笑する。



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