111式の恋1◆
□84.輝く
1ページ/1ページ
きらきら光る、あの目。
どきどきする、この胸。
わくわくする、その心。
「好きです」
って伝えられたらどんなにいいだろう?
「大好きです」
って伝えられたらどんなに幸せだろう?
好きなの、好きなの。
大好きなの。
どれくらい好きかって言うと、たとえになるものなんか出てこないくらい好きなの。
「ポップでキュートでラブリーで!」っていう馬鹿っぽいテーマでデート服を考えてみるくらい夢中なの。
人を好きなれたら、その人だって輝くようになれるはず。
座右の銘は「当たって砕けない」と「恋愛人生」。
恋愛脳の馬鹿って言われることもあるけど、恋してるだけで生き甲斐が生まれてくることもあるから、恋愛ってほんとすごいこと。
女の子は恋をすると急に綺麗になるって言うし、男の子もなんだかカッコよくなるでしょう?
世界最高のオシャレは「恋」だって思うの。
「また輝美の恋愛話かよ」
「うん。だって楽しいし」
居酒屋の一席でわたしと同僚の大輝は酌み交わしていた。
同僚と言っても、大学も同じだったし入社してからの配属部署も一緒なので仕事仲間というよりも友達という感覚が強い。
もっとも仕事中はちゃんと割り切ってるけど、こうやって飲みに行くとあっさり学生時代の気分に戻ってしまう。
まぁ、わたしにとっては良いことなんだけどね。
大輝は水割りをカランと鳴らして、
「毎回毎回そんな話を聞かされるこっちの身にもなれって」
「え、やだ。わたしだって大輝の恋愛話聞いてるじゃない」
「いや、まぁ、そりゃそうだけど…」
「でしょ?おあいこだって思ってね。あ、そうだ。この前気付いたんだけどさ、わたしの名前に『輝く』って文字が入ってるでしょ?これはもう、人生をきらきら輝くスピードで走り抜けなさいってことだと思うの」
「なんだそりゃ」
「面白いでしょ。ひとりで勝手に考えてるだけなんだけど、結構的を射てると思うの」
酒が入って気分が良いわたしは、おつまみを摘みながら大輝に笑いかける。
恋をするには楽しくなくちゃ。輝くには笑ってなくちゃ。
「言っとくけど、『輝く』って字だったら俺の名前にも入ってるからな」
「あ、ほんとだ。今まで気付かなかった」
「お前ほんと自分のことしか見てないな…」
「む。いいじゃん別に。あ、でも、大輝と付き合ったらわたしたちキラキラコンビになれるね!」
「なんだその漫才のコンビ名みたいなのは。ネーミングセンスどっかに置いてきたんじゃないのか?」
「うわ、ひどーい。…だ、大輝だって会社であんまりオーラないくせに」
「こらぁ、人が気にしてることを!」
「きゃー、ごめん!」
笑いながら腕を上げた大輝から頭をかばうフリをする。
学生に戻ったような行動に再び笑いが漏れる。
そして大輝が少し眠そうな顔をして、
「んじゃさ、俺ら付き合ってみる?」
「え、やだ」
「断んの早っ!」
「だって、大輝には好きな人いるんでしょ?わたし、浮気は嫌だからそういうのはしたくないの」
「ん…そっか」
「そうよ」
ごめんね。
大輝のことは昔からイイやつだと思ってるけど、わたしよりも良い女の子は世の中にたくさんいるもの。
わたしと付き合って疲れるより、その子たちと幸せになるのが良いと思うの。
だってわたしは、きらきらしてる大輝の方が好きだもの。
「くそー、まさか輝美にフラれるとは」
「え、それ何気にひどくない?」
「ひどくないひどくない」
べーっと舌を出す大輝。ほんとこういう子供っぽいところは昔から変わんないね。
「輝け、青春!」
馬鹿みたいにはしゃぐのも楽しいよね。
「あはっ!せいしゅーん!」
輝きは最高のオシャレだもの。
end
2010.11.27.