創作長編◆

□Ruin.
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【 00. prologue 】


その日、僕は妹のカトと一緒に小さいパンを分けて食べていた。
父さんは今日も遅くまで仕事だし、母さんは奥の部屋で布の端切れを集めて縫う内職をしている。

僕達の住んでいる小さい家の窓から、キラキラのお星様みたいな明かりが輝いているのが見えた。
街道を行けばすぐそこなんだけれど、色々な事情があって行かせてもらえない。
きっとあの明かりの元で、美味しいものがたくさん食べられるんだなぁと思ったらお腹がキュッとなった。





「お兄ちゃん、これだけじゃ足りない」
「…兄ちゃんだってお腹すいてるよ」

カトがちびちびとパンの欠片を食べながら唇を尖らせる。
僕だってもっと食べたいよ、と言おうと思ったけれど母さんに聞こえるからやめた。
カトをなだめながらパンを分けていると、母さんが休憩のために部屋から出てきた。

「ねぇ母さん、僕らの家って貧しいの?」
「…そうね。食べていくだけで大変。でも、ネルもカトもいるからお母さんは苦しくないわ」

母さんはやつれてるけど優しく笑いかけてくれた。
それが嬉しかったから僕もカトもお腹がすいたことなんて、とてもちっぽけなんだと思えた。
あのね、母さん。と言おうとしたとき、



「もしもーし、ここにネル君はいるかい?」



聞き慣れない声がしたと思ったら無遠慮に玄関の扉が開けられた。

一生着ることなんてないだろうなぁ、と父さんが言っていた高級そうなスーツを着た男の人が五人立っている。
この人たちは誰?母さんの知っている人?と、聞こうとしたら、

「失礼ですがどなたですか?」

いきなりの展開に男の人たちに不審そうな目を向ける母さん。どうやら知り合いじゃないらしい。
意味が分かってないのは僕だけじゃなかった。カトも大きな目をキョロキョロしながら集団を見ている。

逆光であまり顔が見えないけれど、真ん中にいる男の人と目が合った。





「ネル君を引き取りに来ました」



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2010.9.18
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