Moonlight and sorrow

□Moonlight and sorrow 1
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―仕組まれた?

そう疑わずには居られなかった。


「係長と主任は生憎大阪に出張だ。という事で、この3日間付き合って貰う。特命の資料はこれね。課外秘だから取り扱い注意。宜しく」

各個室がガラス壁でオープンなフロアに関わらず、課長室はその奥、窓以外は壁面に目隠しされているせいか、若干天井が低く感じるから不思議だ。

「何故私が、と質問しても?」

課長に呼ばれて入室した。仕事に差し支える言動が多いので早々に辞すつもりで着席を断り机の前に立つ私に手渡されたチャコールグレーのクリアファイルを眺める。

「弥生が好きだから一緒にいたい」
「高梨課長、勤務中です」
「おっとこれは失礼、須藤さん」

公私混同だ。全く失礼とも思っていないだろう口振りで微笑んで見せる課長に、努めて無表情を心掛けてから資料にざっと目を通す。

「…わかりました。お供させて頂きます」
「須藤さんも俺と一緒に居られて嬉しいでしょ。宜しくね」

聞き捨てならないが、気にしていては話が先に進まない。私は資料を捲り続きに目を通した。表向きは出勤監査と、勤怠監査。実質は早出の社員に打刻させている管理職がいるという情報による抜き打ちと見せしめだ。資料を斜め読みした限りでは既に裏は取ってあるようだった。問題は、――。






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