天秤とあたし

□参話
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私は泪さんとお母さんのお墓を造った。



立派とは言えないが、お花も供えた。




墓標には私と雪菜、泪さんの氷泪石を掛けた。




おまじないの様なもの。どんなに離れていても、ずっと一緒…そういう想いを込めて。





雪菜を抱きながら、私と泪さんは沈黙を保ったままお母さんの墓標を眺めた。




チラリと見た泪さんの横顔は、色々な感情が入り交じったとても難しい顔をしていた。





雪菜は私の腕の中でスヤスヤと寝息をたてて眠っている。






『…泪さん、お願いがあるんですけど、いいですか?』




泪さんは私の問いに静かに頷いた。





『…雪菜を育ててもらいたいんです』





「え…?」





泪さんは戸惑った感じの声を漏らした。まさか、母の唯一残した雪菜を自分に預けるなど考えても居なかったんだろう。





『私は今日にでもこの国を出ます』





「…どうして?雪菜ちゃんは連れていかないの?何で私なんかに…」




『いいんです。私は飛影を守ってあげなきゃいけないんです。あの子は魔界にたった一人です。愛も何も知らずに育ってほしくないんです』





だから、と言葉を続けようとしたら、泪さんが口を開き、私の言葉をさえぎった。





「私は何も言いません…
それは刹菜ちゃん自身が決めることだから…」




『……』





「でも…私はいつでも、力になります」





泪さんはしっかりとした口どりでそう言った。





『…ありがとうごさいます、泪さん』






泪さんは少し無理矢理だったが、小さく微笑んだ。



















早く向かいに行きたい。あなたを守りたい。お母さんが私にそうしたように、飛影にも沢山の愛をあげたい。










雪菜の事は本当に悩んだ。連れていくべきか…と。だけど、雪菜にはきっと生きていくには難しい世界だと思った。



だから安全な氷河の国に、置いていくことにした。いつかこの国に嫌気がさして国を出るかも知れない。でも、今はここに置いていくのが一番だと思った。






私は自分の氷泪石を紐に通し、雪菜の首にかけた。
雪菜の首には二つの氷泪石が揺れている。




一つはお母さん、もう一つは私の。





『…雪菜をお願いします』




抱いていた雪菜を泪さんに預ける。腕に残る小さな温もりが嫌に切なく感じた。






「刹菜ちゃん、行ってらっしゃい…」





私は小さく頷き、振り返ることなく氷河の国をあとにした。





ごめん…
でも、氷泪石が家族の証だから…



きっといつか、迎えに行くから…


















遠く離れた氷河の国から…
雪菜の泣き声が、聞こえた気がした。











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