天秤とあたし
□参話
3ページ/3ページ
氷河の国の下には大きな川が流れている。きっと、飛影はこの川の流れに乗って下流の方に流されたのだろう。
私はその川を下流に向かって走った。だいぶした頃、飛影が体に巻いていた呪布が枝に引っ掛かっているのを見つけた。
確か、盗賊に拾われたんでしたっけ…
呪布があるということはここで拾われたんでしょうか…?
こんなことなら、もっと早くに出るべきでした…
私は集中して飛影の妖気を捜す。微かに残る妖気を頼りに、私は先へと足を進めた。
「お頭ー!見てくだせェ!川から流れて来たんでさァ」
「…なんだぁ!?この汚ねェガキは!」
「それが、見て下せェ」
下っぱが指差す方には氷泪石のネックレスが握られていた。
「こいつは…!」
お頭と呼ばれた妖怪は飛影が握っている物が氷泪石だと気付き、無理矢理奪おうとする。
だが、飛影はしっかりとそれを握り締め離そうとしない。最終的には相手の指を噛み、薄く笑った。
「このガキィ!」
手をあげようとした時、刹菜が息切れをしながら茂みから姿を現した。
それに気付いた盗賊達は、警戒しながら武器を構えた。
「ナンだぁ、テメェは」
私は息を整えて、ゆっくりと口を開いた。
『その子を返してください』
そう言うと、盗賊達は一斉に笑いだした。
…何がおかしいんですか?
てか、あんたら馬鹿ですか?私の力を測れないなんて…
適わないって、判らないんでしょうか?
「盗賊がそう易々と言うことを聞くと思ってんのか?」
一匹の妖怪がそう言いながら笑う。
『……だったら、奪いますよ?』
そうすればおあいこでしょ?と首をかしげながらそう言って、妖気とオーラを開放する。
といっても、半分も出してませんが。盗賊達は私の妖気とオーラにあたり、気を失う奴、怯えだす奴がいた。
なんて弱いんでしょうか。私は妖気とオーラをしまい、もう一度問い掛ける。
『返してもらえますか?』
満面の笑みを見せれば盗賊達の顔が一気に青くなり、飛影を私に投げつけ逃げていった。
『わわっ!』
飛影を両腕で受け止める。あいつら、飛影を投げるなんて!今度会ったら半殺し決定です!
『はぁ…。飛影、大丈夫ですか?』
腕の中にいる飛影を優しく撫でながら話し掛ける。
その大きな目が私をじっと見つめる。
や、そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃないですか。
『ふふ、やっと見つけました!もう一人になんかしませんよ!』
逃がさんとばかりに飛影を抱き締める。
飛影、あなたは今何を思い、何を感じているんですか?
実は余計なお世話…とか思ってたりして。
ふふ、そんな事思ったって無駄ですよ?私があなたを離したりしませんから。
私が今何を思っているかって?
そんなの決まってるじゃないですか。
―――――愛しい
只、それだけですよ。
2011.03月26日 08:03