天秤とあたし

□伍話
1ページ/3ページ




「居たぞ!こっちだ!」



「待て、コノヤロー!」





『ちょ、もう勘弁してくださいよ!』




……はい。今、柄の悪い妖怪に追われています。



何故って?知りませんよ、そんな事。飛影と木の上でお昼寝してたらいきなり襲われました。



くそう、飛影との昼寝の時間を邪魔して、ただですむと思ってるんでしょうか。




「氷泪石をよこしなァ!」



……、目的は氷泪石ですか……。ふざけた奴らですね、そう易々と渡してたまりますか!




走りながら後ろを振り向けば、剣を振り回して私を追いかける二匹の妖怪。



物凄い形相ですねェ。



私は動かしていた足を止め、後ろを向き、相手に構える。飛影は勿論抱っこしたまんまですけどね。




構える私を見た妖怪たちは、フッと笑って口を開いた。




「ハッ、女ごときが俺達に勝てるとでも思ってんのか?」




「しかもそんなガキまで抱えてよ。そいつを俺等に渡せばお前を助けてやらねェこともねェぜ?」




『……』




私は黙ったまま妖怪を見据える。
くだらない。あんたらみたいな雑魚は片手で十分です。何を勘違いしてるんだか。飛影を渡せ?渡しませんよ。




「ハッ。こいつ、ビビって声も出ねェってか!」




一匹がそう言って笑うと、もう一匹は不敵な笑みを浮かべ、私に近づいてきた。



『何を勘違いしてるのか知りませんが、貴男たちなんて片手で十分ですよ』




私が無表情にそう言うと、二匹は青筋を額に浮かべ私を睨み付けた。




「ふざけんじゃねェー!」



妖怪はそう叫びながら私に斬り掛かってきた。




私は手にオーラを集中させ、振り下ろされた剣を素手で止める。




「っ!!」




妖怪はギリギリと剣に力を入れ、私を斬ろうとするが、私はピクリとも動かない。




弱っ!力なさすぎですよ、あなた。私は手に力を入れ、剣を真っ二つに折った。ベキン、と鈍い音がなり響く。




剣を折られた妖怪は心底驚いた表情をして、咄嗟に剣を手放し、今度は殴りかかる。




『遅いんですよ、あんたら』





私は拳にオーラを集中させ、相手の溝を殴り飛ばす。直ぐ様振り向き、後ろから斬り掛かろうとしていたもう一匹に回し蹴りを御見舞いする。



二匹は数メートル先まで吹っ飛んでいった。




『ふん』





二匹はピクリとも動かなくなり、それは同時に気絶した事を示していた。




『本当に、弱すぎますよ。よく今まで生きていられましたね』




はぁ…と、ため息をつくと、クイッと袖を引っ張られた。





『ん?』





腕の中を見れば、袖を握りながら私を見つめる飛影が。




不思議に思いながらも、私は飛影に笑い掛け頭を撫でた。




『大丈夫ですよ。飛影を身代わりにするなんて馬鹿なこと、私がすると思ってるんですか?』




私がそう言うと、飛影は掴んでいた袖をゆっくりと離した。




……、もしかして、不安だったんですか?離れように、袖を握ってたんですか!?





『え、ちょ、飛影。なんか物凄く嬉しいんですけど』




そう言って飛影を見ると、少し眉間に皺が寄った。




『え、違うんですか!?』




まさかの勘違い?本当は落ちないように握ってたとか?




そう思っていると、飛影がまた袖を引っ張った。




下を向けば、じっと私を見つめてくる。……可愛いんですけど。





今度は皺は寄ってなく、目が合うと直ぐに手を離し、視線を私から外した。







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ