天秤とあたし
□陸話
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そうだ、京都へ行こう。
みたいなノリでやってきてしまいましたよ、人間界に。飛影を抱き抱え人混みの中をスイスイ…じゃなくて、埋もれながら進んでいく。この感覚久しぶり!
何故人間界に来たかというと、本当にそうだ!、みたいなノリでして……
いやあ、苦労しました。穴を見つけるのは。でも思ってたよりは早く見つかって良かったですよ、全く。
穴を通るときに、一瞬私って何級の妖怪なの、とか、向こうに通れなかったら、とか思いましたが要らぬ心配だった用で。結局は通れたので物凄く安心しました。
そして今に至るというわけです。久しぶりに見た人。嬉しくて頬が緩みっぱなしです。
端から見たら、………きもいですよね、確実に。はい、わかってますよ。
緩む口や目元をなんとか元に戻し、ふと腕の中を覗けばちょっと嫌そうな顔をして私を見つめるひーちゃん。
何故嫌そうにしているのか。
…………私の顔が変だったから戻せよ恥ずかしい的な感じ?
それともさっきから私達に注がれている視線に対して?
もっとも、私もこの視線は嫌ですよ。視線の方をチラリと見たら若い男性と目が合った。向こうは見られると思っていなかったのか、びくっと肩を少しだけ揺らした。
何なんですか、君は。
何をどう思ったのか、男性はにこりと笑ってこちらに近づいてきた。なんでですか。
私の目の前でとまった彼に視線を向ける。ジロッと見上げるとはは、と笑いながらそんな警戒しないでよ、と眉を下げて言われた。
そんな彼を見て犬っぽいと思ったのは内緒です。
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