天秤とあたし
□七話
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はい、只今喫茶店に来ています。そして目の前にはニコニコと笑顔が眩しい皐月君がいます。
なんでこんな事になったんでしょうか。ええ、そうです。皐月君が是非にと誘ってくれたからです。
いや、内心は嬉しいですがね、やっぱり申し訳ない。だって私がお金がないと言ったらオレがおごるからー、なんて言うんですもん。
誘われた時は直ぐに断りましたが、皐月君はかなりのネガティブ思考のようで。
迷惑になるのでと言った途端に俯きながらぶつぶつと何かを言いだしたんです。何かの呪いかと思いました…
なにぶん耳が良くてつい聞こえちゃったんですよ。内容が。
「やっぱり警戒されてるんだ…。オレ怪しまれてるんだ…。そうだよな、こんなオレみたいな奴が……」
あの時はマジで驚きました。それで、つい勢いて行きますって言っちゃったんですよ…
その時の飛影はめちゃくちゃ行きたくねェみたいな顔してました。てか赤ちゃんなんだからそんな顔しないで!
そう言った後の皐月君の背後からピンク色のオーラが見えました。なんかお花舞ってましたよ。どんだけ嬉しいんですか、あなた。
あああ何なのこの人は!何でこんなに可愛いんですか。
それで、腕を引かれてやってきたのがこの喫茶店。なんでも、今人気のお店らしい。スイーツが美味しいとか。
「好きなの頼んで下さい!」
ああ、私は皐月君を見てると、どうも気が抜けてしまうようです。
私はありがとうございますと言って、手渡されたメニューに目を通してみた。
ズラリと並んだ文字は、百数年ぶりに見る日本語。あ、私ジャポン出身だったんですよ。バリバリ読めます。
懐かしいメニューの名前。何もかも、懐かしくて仕方がなかった。思わずポロリといきそうですねえ…
懐かしさにかられてずっとメニューを眺めていたら、何故か皐月君が顔を青くさせていた。
「…もしかして、嫌いなものばかり、でしたか…?」
恐る恐る、と言った感じに聞いてくる皐月君。私はハッとして直ぐに首を横に振った。
『違うの、好きなものばかりで、迷っちゃって…』
ここで懐かしいから、何て言ってしまったらおかしいでしょう?だからちょっと嘘ついちゃいました。…あながち嘘じゃないですけどね。
私が笑いながらそう言うと、そうですか、と安堵したのか胸を撫で下ろしていた。
それを見てクスリと笑ってしまった。私はメニューに視線を戻してパラパラと捲っていく。
『じゃあ、イチゴパフェにします』
「あ、はい!」
皐月君は店員さんを呼んで、珈琲とイチゴパフェを注文してくれた。
うわー、甘いもの凄く久しぶりですよ。魔界にはあまり甘いものはありませんからね。
その後、注文したものが来るまでの間、皐月君と他愛ないことを話した。
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