陽だまりの心

□曖昧にもそれは、
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何を考えるわけでもなく、僕はひたすらに空を見上げていた。先程も思ったことだが、彼らは僕のことをどう思っているのだろうか。そこまで思考を巡らせて、一瞬呼吸を止める。…僕はおかしいのだろうか。まだ片手で数えられるくらいしか関わっていない人間に、何故こんなことを思うのか自分自身よくわからない。…一体僕は何に対して恐怖しているのか。そうらしくもないことを考えてしまう。








僕は数秒考えてから、くだらないとハッと鼻で嗤った。駄目なんだ、彼らの居ないこのよくわからない世界では…。心細いなんて言ったら蜘蛛が泣いて笑うだろう。けれど今の僕にはとても辛い世界に変わりはない。








愛しい人も居ないこの土地で僕はどこまでもつのだろうか。…もうため息をつくことしか出来ない。ああ僕は、こんなにも弱いただの人間なんだ。それなのに。それなのに…









「こいつが目に入らねぇか!!」


「…!!」



『……』








…気を抜いたのは事実だがこんなクソみたいな奴に後ろを取られるなんて僕は馬鹿か。感傷に浸ってのんたらしてるからこんなことが起こるんだよ。








これには流石の僕も自身に厭きれてしまう。これが団長に知れたら大変なことになってただろうに。首に回された腕と突きつけられた仕込みナイフ。列車の奴もこいつも然り、こいつらは予想以上の馬鹿だったらしい。こんなんで僕に挑んでくるなんて、まして不機嫌な僕を捕らえるなんてオッサンはどうかしてるとしか言いようがない。









僕は一度目を瞑って、そしてゆっくりと瞼を開けた。ああイライラする。相手の力量も見きれない様な奴に僕は倒せないんだよ。仕込みナイフがなに?怖がるとでも思った?










『…くたばれよクソが』



「!?」












僕は突きつけられている仕込ナイフに手を添えた。その瞬間機械でできた腕が鈍い音を上げて粉々に吹っ飛んだ。すかさず回し蹴りを入れる。振り向いたときに一瞬合った奴の目に更に苛立ちと嫌気が差した。僕を映したその見開かれた瞳が、一番嫌いなものだった。











オッサンは後ろに止まっていた列車に激突した。大きな音がホームに響き渡るり、血だらけのオッサンがごろんと音を立てながら地面に倒れこんだ。僕はそいつを一睨みする。もう死んじゃえばいいよお前なんか。僕のこと何一つわかってない、知りもしないのに、そんな目を向けて生きてられるとでも思った?









ああむしゃくしゃする。誰も本当の僕なんか知らないくせに。僕は眉間に皺を寄せる。苛立っているけれど、何故か悲しくなってくる。









もうわけ分かんないよ。…早く、君たちに会いたい…











 

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