夢小説〜幻想記録〜

□Boundary fable〜主なき紅茶館〜T
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[Boundary fable]
そう書かれた店にわたしとメリーは居る。

大学の近くにあるこの店にはよく立ち寄る

が、この店はいつきてもとても居心地がよ
い。

私の趣味によく合っている。いや、秘封倶楽
部のイメージに合っているのだ。

このミステリアスな雰囲気が。

外から見ると紅い色をしているところを除いては、いたって普通のよくありそうな喫茶店である。

店内も普通の西洋風の造りをしているが、そこに置いてある物品が変わっているのだ。

見ていると、癒されると同時に、その不思議を調査してみたくなるものばかりだ。

時を止めることができるという逸話がある、

ガラスケースに入れられている懐中時計に、

ヘブライ語で書かれているという魔導書、

何年たっても溶けない氷塊、

どれも店主が集めた珍品なのだという。

しかしここの店主は今はもう居ない。私たちが大学に入る前に亡くなったのだそうだ。

だから今、この珍品たちを保管しているのは一人のウエイトレスだ。

それが彼女____


「注文は決まったかしら?」


__十六夜サクヤ

店主代理のウエイトレスだ。

なぜかメイドの格好をしている。メイド喫茶でもないのにね。

格好はふざけているのか本気なのかわからないが、すごく似合っている。

瀟洒なイメージの彼女にぴったりだ。

若く見えるが、老成した雰囲気の彼女は、よく私たちに店の珍品と、それにまつわる逸話を教えてくれる。

話を聞くと教養が高そうだが、言っていることは胡散臭い。


本当にこの店にぴったりの、ミステリアスなウエイトレスである。


私はこう注文した。


「ミステリーをひとつ。」




   ***                          ***
 私とメリーが店を出たのが午後三時二十四分五十五秒。

それから私たちが向かったのは、町の外れの小さな山にある神社だ。

寂れた神社であることくらいしか知らなかったが、私たちの胸には、期待が宿っている。

免許とりたての運転で、メリーが飛ばす。

正直、メリーの運転は不安だったが、メリーの必死な横顔を見て、とりあえず任せることにした。

サクヤさんにその話を聞いたときも、メリーが示した反応は、ただ興味があるだけというようなものではなかった。メリーは何か知っているのだ。

しかし、そのことを同じ秘封倶楽部で親友でもある私に話そうとしないので、あえて追求はしなかった。

神社に着いたら私にも分かるだろうか。

あの神社と、この地図に記された場所の秘密が__。

車窓の外は見慣れた町並み。

それを忘れることができるくらいの非日常を、期待して向かう。

博麗神社へ。

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