奔走彼女
□come across
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「あれまー、大我にクロちゃんじゃん。やほー」
突然後ろからかけられた声に、火神が勢いよく振り返る。そこにはラフな服装の千穂がいた。
「なっ姉貴!?」
「こんばんは、千穂先輩。どうしたんですか?」
不思議そうな黒子に、千穂はへにゃりと笑いながら、近くの席から椅子を引っ張ってくる。
「いやぁ、実は夕飯つくり忘れてさ。面倒だから買い食いにした」
千穂のトレーにはバーガー1つにポテトが1つ、それとシェイクが載っていた。なるほどと頷く黒子と、呆れたように千穂を見る火神。何とも対照的な2人である。
「2人は部活帰り? 一緒とか仲いいねぇ」
「ほっとけ! 大体一緒に来たんじゃなくて被っただけだ!」
火神は小山を作るバーガーから1つ手に取った。ムスッとした顔でかぶりつく。
千穂も自分のポテトを食べる。
「まぁそう言うことにしといてやんよ」
ニヤニヤと笑って見上げてくる千穂に、火神の顔が引きつった。
「そういえば涼ちゃんのとこと練習試合組んだんだって?」
「らしいですね」
「リコちゃんが電話で教えてくれたんだけど、楽しそうな声だったよ」
会うの久しぶりだね、といえば、そうですねと黒子も頷く。そんな2人を見て、あぁそういえばコイツらは知り合いなんだったなと、火神は妙な納得をした。
「元気にしとるかねぇ、あのわんこ」
「わんこっ!?」
怪訝そうにする火神をよそに、千穂はシェイクを啜る。
「うん、わんこわんこ。ちなみに大型犬ね」
いじめたくなるわんこ具合だと笑う千穂に、火神は会ったこともない黄瀬に同情した。
きっと散々弄られたのだろう、と。
「神奈川だっけ? 当日は私も行くからね! いやぁ、どっちが負けてもおもしろくなりそうですなぁ」
「勝ってもじゃねぇのかよ」
「負けてもだよ。ちなみに大我が負けたら罰ゲームです」
「はっ!?」
「内容は負けたときのお楽しみ。まぁせいぜい頑張ってー」
うふふっと心底楽しそうに笑って、千穂は黒子に挨拶をしてから店を出て行った。
楽しげな千穂とは裏腹に、火神が項垂れていたのは言うまでもない。
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