1day1story
□掴む
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やっと、なんとか掴んだとしてもサラサラと滑り落ちていく砂‥‥‥人間の寿命なんてそんなものだ。
コンコンっと理事長室にノックの音が響く。
どうぞ、と少し大きめに声を上げるとドアが開いた。
入ってきた人物は少しの間黙っているかと思えばそうではないらしい、
「おぃ!メフィスト、お前何したんだ!」
やってきて早々と怒鳴りつけるとは何事だ。
これでも私は忙しいというのに。
書類の山から顔を上げる。
「いきなりなんですか?騒がしい‥‥」
「騒がしいじゃねーだろ!ここ暫く連絡は取れねーし、やっと此処に来れたかと思えば女装してるとかあり得ねーだろ!!」
「それは申し訳ない。此方としては感謝して欲しいくらいなんですけどねぇ‥‥‥」
その理由はナゼカ。
それは獅朗の傍にいる為にガタが来ていた躰の代わり‥‥ようは新しい躰を捜しに行っていた為に連絡がとれなかった。
きっとこの事実を言ったら獅朗にはよく言われないことは承知の上での行動だ。
「メフィスト、お前何処に行ってたんだ‥‥‥」
「躰を捜しに行ってたんですよ」
もう開き治るしかない。
何れ知られるのならば今の方がいい。
「はぁっ?!」
「というわけで私自身の魔力に耐えられる躰を捜しに行ってたんです」
「お前、何したか解ってるのか?」
「ぇえ、この躰を譲って下さった本人の了承は頂いてます」
「だからって‥‥‥」
机をドンっと獅朗が叩く。
私がここまでするのはこれから先と貴方だけでしょう。
それだけ貴方とのときを大事にしたいから。
解って貰らえなくとも、
その手を掴んでいたいから‥‥‥
2011/10/10(Mon) 23:40