NARUTO部屋

□うたた寝の話
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雨隠れほどではないが、霧隠れもまた秘密主義の里であった。

周辺諸国が何度探れども、内部の見通しは濃霧に煙る湿原もかくや。
そうした中から辛うじて拾い上げられた情報の内に、一際朧気な忍の噂があった。

一つ。面青白く、刀剣を用いる。
一つ。木の葉の部隊との戦闘に際し、味方と見られた霧側の暗号部隊を殺戮す。

ただ一度の交戦記録に記載された男の正体はようとして知れず、月日も経ち、諸国との激戦の最中に死んだのではないかとさえ結論づけられ始めた頃、それは再び姿を見せた。

曰く、「霧隠れの怪人」。
霧の里が擁する忍刀七人衆の一人であり、最悪と言われる化け刀と尋常では無いチャクラ量を有する、残忍な忍。
殺した相手の精気を啜り、どれほどの多勢と戦っても疲弊することも、まして倒れることもなかったという――


(それが、これか)

昼下がり。隠れ家の一室。
件の男は相方の看病疲れと連日連夜の寝ずの番が祟ったか、壁に凭れてぐっすり寝入っている。
己の病状をこの相方に告げた時、自分もかなり思い切ったことをしたなと思ったが、今のこいつも大概だろう。
おそらく本人の自覚は無いだろうが相当気を許されているようで、今は幾分回復して戦闘にも支障無くなった、言ってみればこの隙に寝首掻き放題の相手が隣にいても、ろくに目覚める気配も無い。

窓からの風に逆立てられた頭髪がさわさわそよいでいる。

(…噂とは、やはり当てにならないものだな)

まったく、誰が疲れることも倒れることも無い、なのか。

どこか子供めいた表情ですっかり寝付いた男の顔をまじまじ見遣り、青年はくすりと笑みを零した。

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