NARUTO部屋

□元水影様の憂鬱
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「………」
「どうしたのトビ。」

黙り込んで難しい顔をした仮面の男に、幹からひょこりと顔を出してゼツが声をかける。返答は無い。
樹上より遙か下界を見つめる目は、赤く険しいままだ。

「あいつら、」
「ん?」

見下ろす先には黒髪の青年と長物を背負った大男。

「何でちょっと見ない隙にあんな仲良くなってるんだ。」
「そりゃ二人一組組んでるからじゃないの。」

S級犯罪者組織ゆえに例外は多々あれど、必要に迫られてとはいえ戦略上でも生活上でも常日頃から接し続けていれば、よほど相性が悪くない限り多少打ち解けた関係になりはするだろう。数年経った今では距離の取り方にも慣れたのか、他愛ない話をしながら任務先に向かうほどにはなっているようだった。

「軋轢が生じなくて良かったね。」
「今奴ラニ殺シ合ワレテモ面倒ダロ。」

ねえ、と声を合わせて男の顔をのぞき込むが、相手の心は未だ荒れ模様らしく。

「……確かに正体は偽った。それどころか長らく表にも出ず、霧の里自体留守にして他所で工作していたことも多かった。暗殺だの何だの散々利用して里まで抜けさせ、この組織に組み込んでなお良いように使っている自覚はある。そのくせまだ暁入りしてから一度として直接顔を合わせてやりに行ってさえいない。だがそれでも…!」

叩き付けた拳の下で木片が散る。

「あいつにとって、組織の中で一番近しいのは俺だと思ってたんだ…!!」

見下ろす先には青年の三歩後ろを歩幅まで緩めてついて行く大柄な雛鳥の姿。
水影様水影様って何だかんだで日々付き従ってくれた、拠り所を他に持たない酷薄で孤独なあいつはどこに行ってしまったのか。そんなサボりながら任務するような奴じゃなかったのにとめそめそする声を背後に聞きながら、ゼツはほんのり笑って遠い目をした。
自業自得だよねとか、彼が組みたがった時君だって反対しなかったじゃないとか、内心つっこみたいなと思うものの、それとこれとは別問題なんだろう。

「逃がした魚は大きいって言うよねえ…」

黒幕のささやかな嘆きを他所に、空は今日も青かった。

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