NARUTO部屋

□死体喰いの話
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とぷりと水面を波立たせて、潜っていく影を、見送った。

「鬼鮫は戻らなかったのか」
「アア」
「帰ってきたのはこれだけだね」

さっきの鮫が持ってきた巻物を、ひょいと掲げて見せる。大方中身は連合軍の規模や、軍勢の配置図になるはずだ。
敵地深く潜入した者が戻らず、探り出した情報だけが届いたとなれば、潜り込んだ当人がどうなったかなんて、後はお察しだろう。

「遺骸はどうなった」
「僕らも見に行けなかったから」

分からないよ、と首を振る。
連合軍の手に落ちてせっせと解剖されているのか、あるいは手に落ちるまいと自決して、千や万に砕けたか、鳥やさっきの鮫達に食べさせて跡形も無く消えたのか。
そうか、と一言だけ落として踵を返した彼の背は、ほんの少し寂しげにも見えた。彼なりに、組織内でのたった一人の賛同者に思う所でもあったんだろう。トビは、いい子だから。

(それにしても)

未だ僅かに揺れる水面に目を移して、ちぇ、と唇を尖らせる。

「……一口くらい僕らにくれたってよかったじゃない」

僕らが化けた亡骸だってそれなりだったんだから、きっと本物はもっと美味しいに違いなかったのに。
どことも知れない場所でたった一人で、なんてとてもつまらない。
僕らなら、俺達ナラ、骨も血の一滴も残さずに全部きちんと食べつくして、僕らの物にしてあげられたのに。お腹に入れて連れて帰って、トビに彼ならここにいるよと教えてあげて。あの大樹の中へ溶けるまで、一緒にいてあげられたのに。

残念、と言い合って、異形の双子はずぶりと岩壁へ溶けた。

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