NARUTO部屋
□氷色の赤
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在らぬ方を向き、見開いたままの目。
絶叫の形のままに、泡を吹いて動かない口元。
鉄と血の臭いに混じり、異臭が鼻をつく。耐えきれず、嘔吐、失禁した者までいるらしい。
「…酷いものですね」
先刻、暁の強者を前に、勇ましくも挑みかかってきた忍の者共の姿は見る影もなく。散々たる有様を晒していた。
「殺してやった方が、まだマシだったんじゃないですか?イタチさん」
「余計な手間だ」
歯向かえもしない者にまで手を下す間が惜しいのだと、語る横顔に一切の表情は無い。
残酷な方だ、と苦笑して見せれば、ふん、と興味も無さそうな返答が聞こえた。
彼と同じ目をした男で、まるで手向けの枝を手折るような気軽さで、人の命を奪う者を知っている。
冴え冴えとした技に一切の躊躇は無く、時にその口を割らせるためにと酷く痛めつけることさえあった、緋い目のかの人。
かつて刃を突き立てた、『仲間達』の記憶が僅かによぎる。
(……私なら)
もがく彼らに最期の止めを、刺さないままに去ることなど、出来ただろうか。
躊躇なく歩みながら、障害と見れば消していくあの方と。
同じように歩みながら、滅多に止めを刺すことをしないアナタと。
どちらがより酷なのか、私には分からない。