真夜中のこども文庫

□第3夜
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【第3夜】



その、本棚に囲まれた部屋には小さな電気ストーブがひとつ。

その前に二人の女性が膝を折るようにして、子どもの椅子に座っている。

話し声と共に時折、鼻を啜る音が聞こえてくる。







…世の中には二種類の人間がいると思うの。

自分の愛する人(家族、パートナー、友人)の為に、自分を差し置いて全て投げ出せる人と


家族、パートナー、友人を愛しているのに、自分に課せられた使命(時に思いこみ含む)を優先する人が。

例えばスポーツ選手の奥さんは、全力をつくして彼の食生活や生活全般を支えるじゃない?


そうね。



二人の目的が1つなら、こんな幸せはないわ。
でも、この夫婦は、二人とも使命を背負った人だった。

モモちゃんとアカネちゃんのパパは、劇団太郎座主催者であり、民話研究家の瀬川拓男。

ママは…このお話を書いた松谷みよ子。




「モモちゃんとアカネちゃん」は、モモちゃんとアカネちゃんシリーズの第3巻。




この本は、子どもの為に書かれたお話だけれども、離婚や死について、子どもの言葉できちんと書かれているの。





第1巻の「ちいさいモモちゃん」は、モモちゃんが生まれて、すくすくと育っていくお話。
この物語が書かれた当時、子どもを預けて働く母親にまだ偏見があったらしいわ。


モモちゃんに黒猫のプーというお友達ができるのだけど、今後プーはこの一家になくてはならない存在になる第2巻「モモちゃんとプー」。
ここまではまあ、よくあるっていってはなんだけど、児童文学にはある話よね。

問題はこれからなの。



第3巻「モモちゃんとアカネちゃん」


モモちゃんは小学校一年生になって、妹のアカネちゃんが生まれて順風満帆、と思いきや…


パパとママが不仲になるの。

そのうち…パパの靴だけ帰ってくるようになって…。それをママは気に病んで…


森のおばあさんに相談しに行くの。そこでの「あるく木」のお話なんて、…何度読んでも胸が痛くなるわ。



結局ママは、モモちゃんとアカネちゃんを連れて家を出てしまう。


お花の香りがするおうちでの新しい生活。

ママはお仕事を頑張って、二人の娘はすくすくと育っていく。


時々パパを思い出して、悲しくなったりするけど、ありのままを受け入れていく。


その姿は静かで、明るくて、なんだか寂しい。





離婚や死について書かれた子どもの為の本は、結構あるわ。

例えばミヒャエル・エンデ「はてしない物語」

始まりは母親の死。


ケストナー「ふたりのロッテ」

ふたごが離ればなれになったのは、両親の離婚によるもの。


角田光代「キッドナップ ツアー」みたいに、もう少し大きい子が読むようなものはあるのだけど…

どれもマイナスから始まり、プラスの状態になる予感を孕んで物語は終わる。


現在進行形で悲しい事が起こって、それが浄化されてゆく物語はなかなか無いんじゃないかしら。


きっと、子どもに読んであげながら、お母さんが涙するお話かも知れないわね。



だから、そんなに悩まずに、あなたらしく生きたらいいんじゃないかしら?








(引用)


1 ちいさいモモちゃん

2 モモちゃんとプー

3 モモちゃんとアカネちゃん

4 ちいさいアカネちゃん

5 アカネちゃんとお客さんのパパ

6 アカネちゃんのなみだの海

作・松谷みよ子

講談社 青い鳥文庫
モモちゃんとアカネちゃんの本


ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」岩波書店

ケストナー「ふたりのロッテ」岩波書店


角田光代「キッドナップ ツアー」
単行本:理論社
文庫:新潮文庫




真夜中のこども文庫 第3夜は、影姫さまリクエスト「日本の作家 松谷みよ子」でお送りしました。

尚、登場人物は影姫さまではありません。

本当は影姫さま出演のお話にしたかったのですが、選んだ本のハードルが高すぎました…


顔洗って出直します。


影姫さま、リクエストありがとうございました。

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