ユウの小説
□toxic
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―…目を、奪われた。
その場に居る何十人というひとの、何十という視線がただひとりに注がれている。
絶対的存在感。
圧倒的威圧感。
そこに在るだけで。
その場を飲み込む、ほど。
それは、初めての感覚だった―
□□□
「たまには、ツナもスタジオに顔出したらどうだ?」
「え〜…俺はいいよ…」
「そう言うなって。ほれ、行くぞ〜」
「え?、ちょ、父さん…!」
俺の名前は沢田綱吉。
俺の父さんは、カメラマンをしている。雑誌や、都内の巨大広告に父さんの写真が載るのが小さい頃から俺の自慢だった。
よく父さんの撮影スタジオにくっついて行っては、キラキラしたセットや美しいモデル達にワクワクしていた。
大きくなったら、自分もあの中に入りたい、と。
なんらかの形で関わってみたかった。
しかし。
成長した俺は、ダメツナなんて呼ばれていて。
実際、何をやっても何一つうまくこなせない自分にウンザリしていた。
きっと劣等感からだ。
いつしか俺は、スタジオに行く事も無くなっていた。
そんな事をぼんやり考えている間に、どうやら車は目的地に着いてしまったらしい。
「も〜!父さん!俺は行かないって言ってるじゃん!」
「そんな事言ったって。もう着いちまったしなあ…」
無理矢理連れてこらてたのは都内にある、外観の綺麗なビル。
ココにも何度か来た記憶があった。
「今日は雑誌”Vongole”の撮影なんだよ。いや〜実はあそこの社長のジイさんがツナを連れてこいってうるさくて。」
あははお前、気に入られてたもんな、
なんて笑った後父さんは車を駐車場へと入れると、俺の腕をつかんでビルの中へと入って行く。
Vongoreの…。
確か、まだ小さかった頃随分可愛がってもらった記憶がある。
………。
はあ、
仕方ない。
適当に挨拶だけして帰ろうっと。
□□□
スタジオに入ると、何人かが父さんに「おはようございます。宜しくお願いします」なんて声を掛けた。
どうやら、社長はまだ来てないらしい。
控えめに辺りを見回すけど、やっぱり綺麗なモデルさん達が楽しそうに話してて、あぁ来るんじゃなかったと今更ながらに後悔した。
鞄に入っていた分厚い眼鏡を掛けると、一番目立たない所を探して壁に背を預ける。
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