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□出会い。
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俺は死んだ。鷲巣巌との採血麻雀で。
致死量の血を抜かれ、死んだ俺は白服共によって多摩山中に埋められた。
くそっ…どうしてこんなことに…
普段の俺ならあんな打ち方しなかった、と後悔ばかりが頭をよぎる。

しかし、今俺は少し混乱している。
死後の世界なんて非科学的なもの信じてなかったが、現に今死んでいるのに意識がある。
死んだら天国やら地獄に行くというのはよく聞くがそういうことでもないようだ。
ただ体がないだけで魂だけが現世にいるような状態なのか?
よくわからない。

街中を歩いてみてわかったが人にも物にも触れられないし
俺の姿は誰にも見えないようだ。
鏡にもショーウィンドウにも俺の姿は映らなかった。
日光は普通に平気なようだし、腹は減らない。
誰にも気付かれず、生活をするのに金も必要ない。
なかなか快適な気もするが…なぜ俺は現世に残っているんだろうか。
むしろ死んだ奴らはみんなどうしてるんだ?
俺のように意味もなく現世をウロウロしているのか。
それとも俺が特殊なだけで他の奴らは死んだら天国や地獄に行くのだろうか。
現世に未練があるから俺の魂は成仏しないのか?
ああ、よくわからなくなってきた…
俺はこれからどうすりゃいいんだ………

「あのー…」

「……」

俺の姿は人に見えないんだから俺の後ろの奴にでも声かけてんだろ…

「あの…髪上げててサングラスのお兄さーん…?」

「…は?」

髪上げててサングラス、って俺か…?
いやけど俺は死んでるんだから生きてる人間には見えないんだから…
…も、もしかして俺と同じ彷徨ってる死人か!?
しかし、そう思って振り返ったのだが…

俺の後ろにいたのは足元に影のある生きた人間だった。



出会い。



((い、いや!そんなはずはない…見えるわけがないんだ…))
(あの、お兄さん…私の家の前で何をそんなに悩んでらっしゃるんですか…?)
((だっていつもの格好で散々中心街歩いたのに道を開けられなかったんだぞ…?))
(お兄さーん…私の話聞いてくださいよぉ…)

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