頂き物
□6万打のお祝いを頂いてしまいました…!!//
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ボリス、とにこりと笑ったコプチェフにボリスは盛大にため息をついた。
「ボリスが悪いんだよ?俺待ってたのに」
「……」
「ね?」
確かに、確かに約束をすっかり忘れていた自分が悪い。仕事終わりに食事でもいこうかと言われていたのを忘れて一人で家に帰ったのだからそこは反省するべきだとは思うし、悪いことをしたとも思っている。
ただ、それのお詫びに何で似非ストリップショーなんぞをしなければいけないんだ。脱いでよと言われて思わず近くにあった枕を投げつけた。
「寂しかったもん、一人でずっと待ってたんだよ?」
「それは悪かった、でもな…」
「もう俺のことなんてどうでもよくなったの?」
「んなわけねぇだろなめてんのか」
「楽しみにしてたんだよ」
「………っ」
しゅん、と捨てられた犬みたいな顔で言われたものだからぐっと言葉につまる。そう、悪いのは自分、彼は悪くない。ボリスは暫く顰めっ面のまま固まっていたけれど、やけになったのかぎっとコプチェフを睨み付けると着ていたシャツに手をかけた。流されている気しかしないが元凶は自分、どうあがいても彼には勝てない。
「っ……」
「ボリス」
「んだよ」
「ごめんね」
「……」
ほとんど自棄っぱちで、と言うか減るものでもないしと言い聞かせてボタンを一つ一つと外していく、何してるんだと思いながらもそんな申し訳なさそうに謝られたら、なんだか余計に恥ずかしくなってくる。こんなこと、普段なら頼まれたってしないのに。
「ボリス細いけど鍛えてるよね、えろい」
「っ、黙れよお前」
「黙ってみてていいの?」
「その方がましだろ」
「なら、続けてね」
いちいち感想を口にされると余計に意識してしまうからと逃げ道として発した言葉にコプチェフがにまりと笑う。
それから、小さく微笑んで、じっとボリスの瞳をみつめる。その視線から逃げようとすれば彼は顔から首、首から鎖骨、といった感じにねっとりと絡み付くような視線でさらけ出された場所を眺めていく。言葉にはしないからこそ、細められた紫色の瞳がなにを考えているのかが気になって、前にも後ろにもいけなくなった。ぱさりとシャツが方から滑り落ちる。
「……っ、……」
「…………」
「ッ、コプ……」
「ん?まだ大丈夫だよね?」
「…………も、むり」
「だぁめ」
相変わらず口元に笑みを浮かべたコプチェフが、どこかいやらしさを含んだ瞳をするから、恥ずかしくてたまらなくて、やけでもすることじゃあなかったと後悔した。なのにもう嫌だといっても彼は優しく笑うだけ。近くにいるのに触れもせず見てるだけ。悔しくて腹が立って恥ずかしくてたいたたまれなくて、唇を噛んでそろりとズボンのホックに手をかける。
指が震えてうまくいかないそれが余計に羞恥を煽って、じ…とファスナーの降りるおとがやけに生々しく部屋に響いた。ぐっと唇を噛み締めて、なにもみたくないと目を閉じる。もう嫌だ殴りたいあの変態を。嫌だもう、普通にさわってほしいのに。
「ごめんね、もういいよ…やりすぎたね」
「っ、…きらいだ、お前の、そういうとこ」
「ごめん、でも…やっぱりボリスの嫌がることはさせられないし」
「散々させたじゃねぇか」
「だって一応お仕置きだしね?でも、寂しかったのは本当だよ」
ぐるぐる考えすぎて訳がわからなくなってきた辺りで、コプチェフの優しい声と困ったような笑顔。そっとズボンにかけていた手をとられて指先にキスをされた。これだから、彼が嫌いなんだ。引き際を的確に把握していて、ギリギリまでとことん追い詰めるところなんかたちが悪すぎる。
ごめんねと謝るのも本心と計算が半々で、これじゃあどちらが悪いかわかったもんじゃない。なんでこんな変態を好きになったんだろうか。
「……っ、悪かった…ごめん」
「ううん、もういいよ。ねぇボリス」
「ん?…っ、ちょ、…まっ、」
「ボリスがあんまりにやらしいからさ、頂戴?ボリスを」
「ま…、コプチェフ!」
「ん〜?駄目?」
「っ……知らねぇよもう勝手にしろ」
「ありがとう、ボリス好きだよ」
「………知ってる」
腰に腕を回されて怪しい動きをしはじめた彼の手にはっとなって顔を見上げれば、もの足りなさそうな物欲しそうな顔でへにゃっと笑うコプチェフがいて、甘ったるい声でねだられて、あぁもうとそっぽを向く。なんでこうおねだり上手なんだ、いつもいつも甘やかしてしまって…だから待てもできない駄犬になるのか…。
「ボリス好き、大好き愛してる」
「っ、うるっせぇなさっさとしろよ」
「うん、でもボリスの恥ずかしそうにしてる顔も好きだから、ね?」
なにが、ね?だと舌打ちをして、そんな態度にすら嬉しそうな顔をしたコプチェフに、もう二度と約束は忘れないと固く心に誓うことにした。
end