‡滅紫の花の名は‡
□05
1ページ/2ページ
「やっと見つけた…仁…!」
一八の協力のもとようやく見つけた仁と、名無しさんは対峙していた。
「名無しさん…」
眉間にしわを寄せ、どこか苦しげに名無しさんを見る仁。
しかし名無しさんがここに現れたことに驚くことはなく、むしろそれが必然であるかのように纏う空気は落ち着いていた。
「あたし、強くなったよ…」
しかし闘気のオーラが名無しさんを包み込むと、仁は息を呑んだ。
「仁、あんたを殺すために…!」
言葉とともに地を蹴る名無しさん。
「――っ!!」
向かって来る名無しさんの姿にもっとも憎む男の姿が重なり、仁は眉間のしわを深くする。
名無しさんが一八のもとにいたのは分かっていた。
三島財閥の情報網もG社に劣ることはない。
しかし超極秘裡に進められていたデビル化実験までは、掴むことができていなかった。
何か、秘策が…?
名無しさんの攻撃を避け受け流しながら、その動きに警戒する。
以前とは格段に違う力で仁を追い込んでいく名無しさん。
しかしそこでようやく反撃を開始した仁のパワーに、難なく押し返されてしまう。
「…っ」
名無しさんは一旦間合いを取った。
「ふう、やっぱこのままじゃ勝てない、か」
額の汗を拭う。
「名無しさん…何を…」
呟いて小さく笑った名無しさんに、仁が訝しげに問いかける。
「あのね、あたしの血ってなんか他の人とは違うんだって。ってまあこれは結果として分かったことなんだけど、要は何が言いたいかって言うと…」
「…!まさか、名無しさん…!?」
何かに気付いた仁が叫び、それと同時に名無しさんがゆっくりと変化し始める。
背中に4枚の羽を生やし、真紅の瞳、鋭い牙、2本の角と薄い紫の肌を持つ…それに。
「馬鹿な…何てことを…!!」
名無しさんが一八に近付いた理由を知り、仁は愕然とした。
信じたくはないが信じざるを得ない、目の前の事実。
デビルと化した名無しさんの口がゆっくりと笑みの形に変わる。
『仁…』
そこから発せられる、ざらつく声。
ゆらりと揺れる薄紫の体。
『もう、待ったなし…だ、よ?』
「ぐ…っ!!」
刹那、腹部に受けた衝撃によって仁の体が吹き飛んだ。
名無しさんの変化に驚愕しながらも、それでも決して油断していたわけではない。
しかしデビル化したことで恐ろしいほどに増大した名無しさんのパワーとスピードは、仁を圧倒した。
防御をやすやすと破り、仁の体をおもちゃのように弄ぶ。
『もう…おしまい?』
ぼろぼろになった仁を地面に叩きつけて踏みつけ、名無しさんはつまらなさそうに問う。
「…っ」
仁はぎり、と歯噛みし拳を握り締めた。
『!』
瞬間、名無しさんは仁から距離を取る。
同時に膨れ上がる、禍々しい力。
仁もまた、その姿をデビルへと変えていた。
.