‡腕の中の真実‡

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三島一八が女と暮らしている、という噂が流れ始めた頃、あるパーティーが催された。

眉間にしわを寄せ面倒くさいと呟いた一八だったが、不参加を決め込めない何かがあったのか渋々支度をしていた。


その時、支度を手伝っていた名無しさんにふと声をかける。

「お前も参加するか」


「えっ!?」

傍若無人な一八を従えるほどの力を持つ、自分にはまず関係のない世界の話だと思っていた名無しさんは全力で拒否する。

「そんな、私なんかが行けるわけないじゃないですかっ、」


「ああ、それはいいですね」

しかしそれを遮る黒服の声。

「名無しさん様くらいの年齢の方も参加されるようですし、きっと楽しいと思いますよ」


「決まりだな」

「……」





有無を言わさない形でパーティーに参加することになってしまった名無しさん。


「我々がきちんとお護りしますから大丈夫ですよ」

「一八様は外から参加されますので、帰りはご一緒にお帰りください」

と送り出され、初めは所在なげに壁にもたれていた。


しかしその後は黒服の言っていたよりもっと若い、高校生くらいの女の子たちの存在に驚きつつも話してみると楽しく、時間は過ぎていった。


そこに、遅れていた一八が到着した。

気付いた名無しさんの顔に笑みが浮かぶ…が、それはすぐにこわばる。


派手な化粧をした女が、一八の腕に絡まるようにして歩いていた。

名無しさんは思わず目をそらす。


「少し待ってろ。挨拶だけしたら帰る」

しかし一八はそれを気にした様子もなく、名無しさんに一言残し通り過ぎて行く。


すると、一八から離れた女が名無しさんに近付いた。

「情熱的だったわ、彼」

耳元で囁かれ、体に衝撃が走る。


言葉を失った名無しさんに女は、自分の首をトンと指しながら勝ち誇ったような笑みを浮かべて去って行った。


名無しさんは一八を目で探した。

恰幅のいい男性と話している一八の首もとを見る。


「――…!」

はっきりとは見えないが、自分は今まで残したことはないし、だから当然残した覚えもない痕がそこには残されていた。


ぎゅっとこぶしを握りしめる。

名無しさんの中に、今まで感じたことのない感情が渦巻いていた。





その後は、どのように行動してどんな会話をしたのか覚えていない。

気が付いた時には、部屋へと戻るエレベーターの中だった。


部屋に戻るなり、一八はジャケットを脱ぎ捨てグラスにバーボンを注いだ。

ソファに体を沈めた一八に近付いた名無しさんは、その手からグラスを奪い取る。


「…おい」

不機嫌そうな声を出す一八の前で名無しさんはグラスの中身を口に含み、グラスをテーブルに置くと、ゆっくりと一八に口づけた。

名無しさんから注がれたバーボンが、一八の喉を流れていく。


それが飲み干されたのを確かめてから、いったん唇を離し端からこぼれたそれを舐め取る。

そうしてまた唇を重ねると、今度は差し込まれた一八の舌に自分のそれを絡めながら、名無しさんは一八のシャツのボタンに手をかけた。


露わになる、筋肉で整った美しい体。

いつものように見とれてしまいそうになるのを抑え、その胸の突起に口づけ、舌を這わせる。


「どうした、今日はえらく積極的だな」

名無しさんの手が一八のベルトにかけられた時、少し意外そうに一八が問いかける。


「いけません、か…?」

一八の脚の間に跪いた名無しさんが問い返した。


一八の口角がゆっくりと上がる。

「いや、悪くない」

その言葉と同時に一八の屹立は、名無しさんの口内へと呑み込まれていった。





舌先で先端から溢れる液体を舐め取りながら全体に絡め、喉の奥まで呑み込みながら握り込んだ手を上下させる。

小さく水音を響かせながら、名無しさんは少しずつ一八を昂めていった。


「…っ」

口の中のそれがぴくんと震え、一八が小さく息を吐く。

名無しさんの髪をなでていた手に力が込められ、それに合わせて名無しさんは動きを速めた。


「っ、出すぞ」

低くこぼれた声の直後、どくんと強く脈打ったそこから白濁が吐き出される。


それを喉の奥で受け止め、ためらいなく飲み干した名無しさんは、唇の端を指先で拭いながら一八を見上げた。

満足げに笑んだ一八がその頬をひとなですると、それだけで名無しさんは熱い息を吐く。


「来い」

一八が言うと、それを待っていたように名無しさんがゆらりと立ち上がる。


パーティードレスの裾から下着だけを脱いで一八にまたがると、未だ熱を失わない屹立の先端を自分の中心に宛てがった。


「ん…っ、ふ、ぅ…」

ゆっくり腰を落とすと、一八の質量が名無しさんの中を埋め尽くしていく。


その時、

「やっ、ぁあん…っ!」

全てを呑み込むまでもう少しの所で、一八が下から突き上げた。


「あ、や…っ、一八さ…、ん、あぁ…っ」

そのまま休む間もなく与えられる快感に我を忘れそうになりながら、名無しさんは一八の首に抱きついた。


そしてその首もとに噛み付くように唇を寄せ、強く吸い上げる。

そこに残された痕を消そうとするように。


「…何か吹き込まれたか」

動きを止めた一八が言う。


「…っ」

その首もとに顔を埋めたまま、名無しさんは言葉を吐き出した。

「あの人を…、抱いたんですか…?」


瞬間、一八は鼻で笑った。

「あんな女になど勃たんわ」


「え…っ、あ、あぁ…っ!」

そして名無しさんの腰を掴み、更に強く突き上げる。


自分の中で存在を主張する一八の熱を感じながら名無しさんは、『それが意味すること』にわずかな期待を寄せていた…。

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