人形遊び
□doll5
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二日目の朝、骸は葵の手を引いて食堂に姿を見せた。
その姿にも驚いたが、目の下にできた隈にも驚いた。昨日部屋を出て行ったままの姿で現れたかと思ったら、笑みを浮かべているとはいえ疲労の色が伺える。
席に着いた骸にツナが話しかけた。
「どうだった、葵は」
「そうですね、とてもいい子ですよ」
虚ろな目で隣に座らせている葵の頭を撫でる。
昨日まで触ろうともしなかった骸が慣れたように触れることにも、少し掠れた声も、ずれた返答にもツナは驚いた。
「え?いや、そういうんじゃなくて」
「教えたことは一回で覚えますし、なにより成長が早いですね」
「いや聞けよ俺の話」
「ねえ、葵?」
話しかけても反応しないだろ、そう思っていたツナは目を疑った。
ちゃんと話を理解してるように葵が頷いた。心なしか、昨日よりも雰囲気が柔らかくなっているような気がする。
なにを言ったらいいか、なにを言うべきなのかわからずツナは黙った。
それまでエスプレッソを飲んでいたリボーンが立ち上がり、葵に近付き抱き上げた。
何事かと骸とツナが顔を上げる。そんな二人にリボーンは見下ろしながら言った。
「おい骸。寝てないんだったら寝て来い。葵のことは俺達で見てる」
「俺達って、」
「当然ツナ。お前もだぞ」
「ま、ランボみたいに騒がしくないからいいけどさ」
騒がしく懐かしい日々を思い出し、苦笑いをした。
半分寝ている顔でぼお、と話を聞いていた骸はふらりと立ち上がった。
「じゃあ、よろしくお願いします。葵、いい子にするんですよ」
頷いた葵を確認した骸はおぼつかない足取りで食堂を出て行った。自室に戻ったのだろう。
朝食も食べずに行ってしまった骸をシェフは悲しげな目で見ていた。