人形遊び

□doll7
1ページ/3ページ


太陽が昇り始め白み始めた空を、部屋のベランダから見ていた。
少しでも感情を出すために色んなものを見せようと思ってのことだったが、春先の早朝はまだ肌寒く、骸は部屋の中に戻らないかと提案した。
するとくりくりと丸い瞳で首を傾げた。

「どうして?」
「どうしてって、葵は寒くないんですか?」

鳥肌が立っている体を擦る骸を見て、心底不思議そうに葵は頷いた。
――そうか、体は人形だから感じないのか。痛覚もきっと――
そう考えていた骸の手に痛いくらいの冷たさが触れた。驚いて見ると、葵の手が触れていた。

「骸?」

どうしたの?と葵手を引く。
冷たかった手は外気に晒され氷のようになっていた。
底冷えするような冷たさに鳥肌が増した骸は、屋敷の中を見ようと半ば強引に部屋の中に入れた。
けれど葵は外よりも、広い屋敷のほうに興味が移ったらしく、少しだけ口角が上がっていた。
そのことに気付いた骸は微笑みながら、歩幅の違う葵に合わせてゆっくりと歩き出した。

「まずは玄関から見ていきましょうか」



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ