短編
□人形遊び外伝1
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「あーあ……あいつ、今頃どうなってんのかな」
ある日の昼下がり。日差しの差し込む談話室でベルフェゴールがぽつりと零した。
その言葉にその場にいる全員が反応したが、なにも言わずに微妙な顔をした。それぞれが色んなことを考え、寂しいような不機嫌なような、興味がないような、顔の見えない者までいる。
顔の見えない――マーモンが軽く溜め息を吐きながら諭すように言った。
「仕方ないよ、ベル。僕達に子育てなんかできるわけないし。それに、絶対に殺人狂いになるからね」
その言葉にスクアーロは小さく噴き出した。
そして、にやっと笑い馬鹿にしたように言った。
「確かになぁ。まあ、あんな小さいやつに殺される馬鹿なんていねえと思うけどなぁ」
「あんな小さい子に人殺しさせるなんて、あんた達鬼ねぇ」
ぐすんと鼻を啜ったルッスーリアは着けていたふりふりのエプロンでサングラスの奥の涙を拭いた。
気持ち悪いものを見る目で見ていたスクアーロはさっと目を逸らし、近いようで遠い場所にいる少女を思った。
「会わせてくれるわけ……ねえよなぁ」
たった数日だったけれど確かにヴァリアーの中にいた少女は、記憶よりも深く心に焼きついていた。
寂しげに呟かれた言葉に、ベルフェゴールは抱きしめていたクッションをさらに強く抱きしめた。
しんみりとした空気が流れ誰もなにも口にせず、ただ時計の針の進む音だけが響いた。
からん、と氷が鳴る音が響いた。
「会いに行けばいいじゃねえか」
静かに響いた力強い声に、その場にいる誰もが勢いよく顔を上げた。
そんなことには構わず、ザンザスはコップに入ったウイスキーを飲み干した。