□性急愛
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「うん…何時も側にいるから…。触ろうとして叩かれるのは日常だし…」
 頷き話かけて、ふと思い至った。
「…だから、七緒ちゃんがすっごくきらきらして見えて、襲いたくなっちゃったのかな?」
「知りません!」

 七緒は腕を突っぱねて、春水の腕の中から逃げようとしたが、がっちりと抱きしめられていて逃げることができない。
「もう、いい加減に離して下さい」
「やだ、七緒ちゃんをもっと堪能したいんだもん」
 髪に鼻先を埋めて息を吸い込み匂いを嗅ぐ。
「ああ…七緒ちゃんの良い匂いだ…」
 あまりに安堵したような声色に、七緒は力を抜いてしまった。

 たまには、欲望に突き動くのもいいかと思ったのだ。
 
 本能に従い、動いていて、それでも尚七緒を選んだのだ。

 他の誰でもなく。

 実際に、執務室に入るまで襲われる直前まで、春水が誘惑されるべき相手は多々いたのだ。

 茶店でさぼっていた春水を見つけた。そこは近頃評判の看板娘のいる茶店だった。
 茶店から八番隊へと帰って来る道すがら、珍しく女性死神から声を掛けられていた。
 執務室に入る直前、珍しく春水に憧れて八番隊にいる女性死神が、興奮した面もちで春水に挨拶をしてきた。

 それでも、彼女たちには笑顔を向けただけで触れもせず、七緒を真っ直ぐに求めてきたのだ。
 部屋を移動する手間所か、長椅子すら移動する手間すら惜しんで。
 春水の逞しく広い胸に頭を預け、七緒は口元に微笑を浮かべた。


「全く…えろじじいなんだから…」
「ふふ、ありがと、七緒ちゃん…」
 七緒の言葉を褒め言葉と受け取り、春水は笑った。
「…仕事して下さいよ」
「愛しい七緒ちゃんの為に」
「だったら、毎日ちゃんと仕事してくださいっ!」
 ぼやきながらも、七緒の口元は綻んでいた。




おしまい
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